【書評】『チャヴ 弱者を敵視する社会』 オーウェン・ジョーンズ

「本書の狙いは、労働者階級の敵視の実態を明らかにすること」。そう語る筆者が綴る、弱者がさらに叩かれる世界の現実。
 
生活保護、移民、障碍者、ホームレスなど、現在の社会は弱者に同情と支援をもたらすのではなく、蔑視と排除とをもたらしている。これは日本に限った話ではなく、筆者の生まれた英国でも事情は同じである。労働者階級は分断され、かつての力を失い、嘲りの対象となった。それにより社会は大きく分断され、持てる者と持たざる者の格差は広がる一方である。我々はどこでどう道を誤ったのだろうか。この本にも明確な答えも、的確な対策も記載されていない。だが我々が何を選ぶべきか、そのヒントはもらえると思う。現代社会のありようを、見事に描き切った一冊。おすすめ

【書評】『経済大陸アフリカ』 平野克己

アフリカと聞いて、どのようなイメージが浮かぶだろうか。貧困、飢餓、紛争、腐敗、独裁、などネガティブなイメージばかりが先行するアフリカ。そんなアフリカを経済面から切り取った一冊。
 
進境著しい中国企業のアフリカでの存在感はいかほどか、これまでアフリカへの対外投資が少なかった理由とは、近年アフリカの資源が注目されるようになった理由とは、なぜアフリカでは独裁制が優勢なのか、アフリカで製造業が立ち遅れた理由とは、などなど。色眼鏡を外してみれば、アフリカの真の姿が、アフリカのこれからの可能性が見えてくる。これからの世界経済を語るうえで、外せないアフリカ。そのアフリカを知るうえで必読と言っていい、アフリカ研究の金字塔。いちおし

【書評】『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』  高橋 団吉

「船のようにたくさんの人を乗せて、空を飛ぶように地上を走る乗りものは、まだこの地球上で、だれも見たことがなかったのである」。世界に類を見ない超特急、新幹線をつくりあげた男の記録。
 
これは百戦百敗した明治男の物語である。収賄容疑で投獄され、職を失い、事業に失敗し、戦乱にまみれ、数え切れぬほどの挫折を重ねてきた男。だがその人生の最後の最後で、一度だけ勝った。その勝利の置き土産が東海道新幹線であり、「鉄道ルネッサンス」とも言うべき世界的な高速鉄道建設の流れであった。1955年、この物語の主人公である十河信二71歳の時、彼が国鉄総裁に就任したとき、国鉄は散々たる有様であった。増え続ける鉄道需要、毎日のように起こる事故、老朽化した車両設備、激化する労働問題、旧態依然とした官僚組織、それに加えて政治の圧力もあり予算の手配もままならない。そんな八方ふさがりの中、十河は戦前にお蔵入りになった「夢の超特急」計画をぶち上げる。国鉄内の反対論が、政治家の横やりが、進まない用地買収が、ままならない予算が、その他数え切れないほどの障害が、十河の行く手を阻む。
 
今でこそ当たり前になった新幹線という風景を、まだ誰も見たことのなかった時代の物語。まるでコロンブスの卵のように、当時の人からすれば夢物語でしかなかった新幹線。愚直に、泥臭く、大仕事をやってのけた男の生涯は、刮目に値すると思う。おすす

【書評】『お嬢さん放浪記』 犬養 道子

戦後まもなく欧米に留学した筆者の、痛快無比な放浪記。
 
1948年秋、いまだ戦災の余燼くすぶる日本から、一人の女性がボストンへと旅だった。入院先で学費を荒稼ぎしたり、オランダ領事に頼み込んで無理やりヨーロッパにも留学したり、シカゴのスラム街に迷い込んだり、ドイツで講演料を稼いだり、しまいにはフランスの古城をリノベーションしてインターナショナルハウスを作ったり。あふれる行動力と、涌くがごときアイディアと、何より周囲の驚くべき協力とで駆け抜けた青春記。わくわくとページを繰る手が止まらない、筆者の危なっかしさに引き込まれる一冊。おすすめ

【書評】『あの会社はこうして潰れた』 藤森徹

国内最大の企業情報データベースを保有する、帝国データバンク。そこで倒産を扱う情報部で、長年にわたり企業取材を続けてきた筆者による、企業の倒産の真実とは。
 
構造変化に巻き込まれた企業、老舗の「のれん」が裏目に出るとき、粉飾で姿を消した企業、同族経営の落とし穴、などなど。数多くの企業倒産の事例には、興味が尽きない。だがこの本の真骨頂は、倒産理由から見えてくる経営の「べからず集」であると思う。中小企業が生き残る道、順風満帆の時の心構え、事業を安定させるコツ、社訓・社是を持つ意味、新事業に乗り出すリスク、などなど。生々しい事例から、得られる内容は多岐にわたる一冊。おすすめ

【書評】『「学力」の経済学』 中室 牧子

「経済学がデータを用いて明らかにする教育や子育てに関する発見は、専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある」。教育経済学者の筆者による、事実ベースの教育論。
 
試験前に学生の祖母が亡くなるのはなぜか、ご褒美の効果的なあげ方とは、褒めるときはどこを褒めるべきか、ゲームをやめさせれば勉強時間は増えるのか、教育投資の収益率はいくつか、少人数学級は効果があるのか、教員免許は教師の質を保証するのか、などなど。印象論でもなければ、感情論でもない。データを分析して得られる教育論は、読み物としても一級品である。いちおし

【書評】『人が育つ会社をつくる』 高橋俊介

人が組織の中で成長するためには、何をすればいいか。経営コンサルタントとして多くの企業を見てきた筆者による、キャリア創造論
 
人が成長するためには、何が必要か。人の成長のために、組織はどうあるべきか。様々な成長パターンを事例から分析し、組織の中でキャリアを作る方法を探る一冊。キャリアチェンジはどのようにすればよいか、スペシャリストとプロフェッショナルの違いとは、良いキャリアの条件は何か、マネジメントとリーダーシップの違いは何か、などなど。自分のキャリアについて、成長について、自問自答させられる一冊。おすすめ