【書評】『超入門 資本論 』 木暮 太一

経済学史上、最も影響力のある著作と言っても過言ではない『資本論』。経済入門書作家である筆者が解説する、資本論のエッセンス。
 
資本論は、「価値」と「使用価値」、「剰余価値」、「剰余価値」が減っていくこと、の3つをエッセンスとしている。我々の給料を決める要素は何か、利益とはどのように生み出されるか、デフレ下で給料が下がるメカニズム、イノベーションの功罪、不況の役割、コモディティ化を乗り越える方法、などなど。身近なたとえで資本論、そして経済学の基本思想がよくわかる一冊。おすすめ

【書評】『ギリシア人の物語Ⅲ』 塩野七生

大航海時代までの1500年以上にわたって、欧州人は東ではアレクサンドロスが、西ではカエサルが踏んだ地点に挟まれた世界を、世界と思いながら生きてきた」。700年にわたるギリシア人の物語、完結編。
 
国家を機能させるには、大手企業が振るわなくなる理由とは、勝者と敗者を明確に分ける意味とは、兵士が心から尊敬する人物とは、情報をどこまで上に報告すべきか、迷いと確信の違いとは、リーダーの資質とは、成長がもたらす孤独とは、などなど。ギリシア世界の没落と、いまだに人々を惹きつけ続けてやまないアレクサンドロス大王と、そこに仮託して描かれる人間世界の理。多くの歴史を見てきた筆者だからこそ描ける、溢れんばかりの人への興味に満ちた一冊。ギリシアからローマ、近代までの地中海の3000年の歴史を描き続けてきた、塩野七生の完結編。いちおし

【書評】『社会心理学講義』 小坂井敏晶

「人間を理解するには、どのような角度からアプローチすればよいのだろうか」。筆者のそんな疑問から生まれた深遠な一冊。
 
社会心理学とは、「人間とは何か」という問いに答えることを命題とし、社会学、心理学、哲学の学際に存在する分野である。批判的な読書とは何か、プラシーボ効果はなぜ効くのか、「私」というものは意識のどこにいるのか、世界は正義に支えられているのは本当か、意志と行動とはどちらが先か、同一性と変化という相反する要素を両立させうるものは何か、権威と権力の違いはどこにあるのか、などなど。縦横無尽に繰り広げられる論理は、心地よい浮遊感とともに読者の感性を刺激する。知性とは、このような学際分野でこそ必要とされる資質であると再認識させられる一冊。座右に置いて繰り返し読みたくなる、中毒性のある一冊である。いちおし

【書評】『CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる』 J・C・カールソン

「CIAのインテリジェンス・スキルが、一部の天才にしかできない高度な職人芸でないからこそ、一般のビジネスパーソンには参考になる」。そう語る筆者による、情報を引き出し、危機に対処するためのテクニック集。
 
相手に「会いたい」と思わせるために必要なこと、初対面の相手に信頼してもらう方法、人材採用のっ勘所、敵に対する遇し方、質問で相手の意図を知るための訓練方法、などなど。元CIAの諜報員だった筆者が明かす、諜報のテクニックの数々。そのどれもが、少しの訓練と意識で出来そうなものばかり。「相手の本音を引き出す」というごく普通の欲求を満たしてくれる一冊。おすすめ

【書評】『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』 城戸 久枝

「父は、私の父になるまでに、どんな道を歩んできたんだろうか」。日本生まれの中国残留孤児二世である筆者による、自分につながる歴史をめぐるノンフィクション。
 
筆者の父は、中国残留孤児だった。三人称で語られる第一部では、満州国軍人であった祖父の話、敗戦とそこからの逃避行、中国での養父母との暮らし、奇跡の帰国と日本での日々、そして養母との再会までの物語。一転して一人称で語られる第二部では、筆者自身が中国に興味を持ち、中国への留学、学業の傍ら父のゆかりの地を訪ねる日々、帰国後に知り合った元残留孤児のこと、そして父の「故郷」への再訪までのルポルタージュ
 
波乱万丈の物語を、淡々と描ききった筆者の力量は、これがデビュー作とはにわかには信じられないほどである。深く深くため息をつきたくなるような、それでいて心が温かく満たされていくような、不思議な読後感。自分もまた、教科書で習った「歴史」と、今の自分とのつながりを探す旅に出たくなる一冊。いちおし

【書評】『若い読者のための経済学史』 ナイアル・キシテイニー

「経済学とは、社会が資源(リソース)をいかに使うかを研究する学問」。そう語る筆者による、経済学がいかに世界を解き明かしてきたかの歴史書
 
アダム・スミスに始まり、マルサスケインズなどのそうそうたる経済学の大家の理論から、中央計画経済が破綻した理由、先進国が少子化になる理由、漢江の奇跡が起こせた理由、通貨危機が起こるメカニズム、などを解き明かした一冊。知っていそうでよく知らない経済学のあれこれについて、目から鱗が落ちる一冊。おすすめ

【書評】『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』 ルーシー・クレハン

3年に1回実施される国際学力テスト、PISA。そこで高得点を挙げる国々は、どのような教育を行っているのだろうか。教師でもある筆者による、そんな疑問から生まれた教育論。
 
フィンランド、日本、シンガポール、中国、カナダ。文化も、風習も、国民性も、政治制度も違うこれらの国々で、筆者は多くの教師、親、政治家から意見を集める。各国ごとに教育制度は異なり、もちろんいいところもあれば悪いところもある。だがそれらの制度に共通する、高い成績と公平性をもたらす5原則とは。
 
細かい統計データはあまり用いられず、筆者とその取材先の印象ばかりで話が進んでいる感はある。だがそこから導き出される結論は、「子どもの可能性を信じる」というしごくまっとうなもの。その結論よりむしろ、それを導き出すまでの各国の教育制度について興味をそそられる一冊