なぜこんにちの国家間にはこんなにも不平等が存在しているのか。その起源は19世紀にある。工業化と技術改革を行った国の多くは、現在の先進国になった。ではそれを逃した国に発展の余地はないのか。また現在の先進国は、未来永劫先進国であり続けるのか。歴史と経済とを深く知る者だけが著せる、大統一理論の実践編。「日出ずる国」であり続けるために、必読の一冊。いちおし
【書評】『9プリンシプルズ』 伊藤穣一、ジェフ・ハウ
「これまでの常識が通用しなくなった、新しい時代に通用する理念、哲学、行動原理とはどんなものか?」ベンチャーキャピタリストとして世界の最新テクノロジーに投資し、現在はMITメディアラボの所長を務める筆者による、未来を生きるための9原則。
我々の時代を定義づけるのは、非対称性、複雑性、不確実性の3つの条件。我々は、そんな海図のない世界をいかに生きるべきなのか。権威より創発を、プッシュよりプルを、地図よりコンパスを、安全よりリスクを、選ぶべき時代。既存の常識の通用しない時代、世界は根本的な構造改革のただ中にある。さらに人工知能により、我々の存命中にも世界はまた完全に変わるかもしれない。そんな新しい時代に適応できる能力とは、おもしろがる能力なのだ。
恐らくこの本を読んだ感想は2種類に分かれると思う。恐れと嫌悪か、歓迎と適応か。間違いなく後者の反応を示す者こそが、これからの時代を創っていく者だと思う。新時代の羅針盤となる一冊。いちおし
【書評】『国家はなぜ衰退するのか 上』 ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン
国家はなぜ衰退するのか。経済学者である筆者が、この大きすぎる問いに挑む意欲作。
盛者必衰の理の通り、いかに栄華を誇った国家もいずれは衰退する。そこにはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。上巻はその前段階、国家がいかに繁栄するかについて。
国家の成長には2種類ある。1つは収奪的制度の下での成長。既存の技術を基にした成長であり、スターリン時代のソ連など。もう1つは包括的制度の下での成長。技術の変化を必要とする、持続的な成長であり、産業革命期の英国など。現在の米国、メキシコ、ソマリア、さらには共和制ローマ、大航海時代のコンゴ、オーストリア帝国、海禁政策時の明、漢江の奇跡の韓国、などなど。古今東西の国家の繁栄の歴史を紐解き、そのメカニズムを探る一冊。
【書評】『一汁一菜でよいという提案』 土井善晴
「一汁一菜とは、「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います」。そう語る、料理研究家である筆者による、シンプルな食のすすめ。
日本には「ハレ」と「ケ」を区別して、ケの日常は慎ましく、必要最小限の食事で暮らす風習があった。そんな「ケ」の食卓は、一汁一菜のごくシンプルなもの。シンプルだからこそ、美しさを求め、楽しむこともできる。禅の思想にも似た和食の心得。それは西洋料理とは根本から異なる思想に支えられている。和食で香辛料があまり使われない理由、「すみません」の語源、アクを除くことで失われるもの、刺身だけが「お造り」という字を使う理由、などなど。シンプルだからこそ、美しい、和食のことをもっと知りたくなる一冊。いちおし