【書評】 『日本論の視座』 網野善彦

日本という社会はどこから来て、どのように成立したのか。民俗歴史学の泰斗による、英雄の登場しない日本論。
 
「日本は島国」「日本は単一民族国家」「稲作、米食日本民族の本質」などの、巷間言われている通説から離れてみれば、日本史は驚くほど豊かな側面を見せる。それは教科書に載ることのない、名もなき民衆の歴史かもしれない。だが歴史の中で人々はどのように暮らしていたのか、何を食べていたのか、どんな仕事をしていたのか、そしてどのように生きていたのか。それらを知ることで、歴史は従来と全く異なる面白さを提供してくれる。民俗史から、「日本」という国号や天皇制、律令国家の世界史的な意味、中世の「女性活用」の歴史、海上交通と陸上交通の角逐など。目から鱗が落ちるような、歴史の新たな視点を提供してくれる一冊。いちおし