【書評】『未完のファシズム』 片山杜秀

戦時の日本は強力政治や総力戦・総動員体制に失敗し、その意味では未完のファシズムとも言える」。そう語る筆者による、昭和の軍人たちが何を考え、いかに1945年の滅亡へと至ったかの記録。
 
筆者はこの物語を、滅亡の30年前から始める。青島という局地戦とはいえ、第一次大戦に参戦した日本。それは日露戦争のように歩兵の屍をもって勝つ戦争ではなく、砲兵の火力で片を付けるという、近代戦の始まりの戦争であった。世界に先駆けて近代戦の戦い方を確立した日本陸軍。だがそこからどうして、太平洋戦争では再び精神主義に戻っていったのか。陸軍思想史や政治思想史をひもときつつ、太平洋戦争の敗因を探る一冊。おすすめ