【書評】『日本国家の神髄』 佐藤優

日本のために戦って靖国神社に祀られている英霊を顕彰し、追悼するのは当然のこと。だがそのことと酷い負け戦を美化することとは全く異なる」。そう語る筆者による、日本を日本足らしめている思想の正体とは。
 
筆者は1930年代後半に書かれた『国体の本義』をベースに議論を進める。その本は非合理的な観念論を阻止し、欧米思想と科学技術の成果を日本が取り入れることを大前提にした、当時の日本の英知の結集だと筆者は語る。観念的な話が多く、明確な根拠が少ない一冊。だが「日本国家」という形のないものを説明し、そこに意味づけしたという点では筆者の力量を感じさせられる一冊。おすすめ