【書評】『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』 佐々木健一

これは、知られざる偉業で世界の空の安全を確立した、一人の気象学者の伝記である。
 
かつて、空の旅は危険と隣り合わせであった。毎年のように航空機の墜落事故が起き、18か月に1度の割合で離着陸時に突然起こる「謎の墜落事故」で100名を超す人々が一瞬にして命を失っていた。ところが今では、1日に50万便もの航空機が飛んでいるにもかかわらず、2017年の死亡事故は0件。「謎の墜落事故」の原因である「ダウンバースト」を突き止めたのが、本書の主人公である藤田哲也である。「気象分野にノーベル賞があったら、真っ先に受賞していた」とまで言われる男は、いかにして気象学者となり、いかにして大発見をするに至ったのか。
 
サブタイトルにあるように「世界の空を救った男」であるにもかかわらず、日本での知名度は皆無と言っていい男。だがその波乱に満ちた人生と、栄光に包まれた功績は、もっと知られてもいいと思う。おすすめ