【書評】『国家はなぜ衰退するのか 上』 ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン

国家はなぜ衰退するのか。経済学者である筆者が、この大きすぎる問いに挑む意欲作。
 
盛者必衰の理の通り、いかに栄華を誇った国家もいずれは衰退する。そこにはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。上巻はその前段階、国家がいかに繁栄するかについて。
 
国家の成長には2種類ある。1つは収奪的制度の下での成長。既存の技術を基にした成長であり、スターリン時代のソ連など。もう1つは包括的制度の下での成長。技術の変化を必要とする、持続的な成長であり、産業革命期の英国など。現在の米国、メキシコ、ソマリア、さらには共和制ローマ大航海時代コンゴオーストリア帝国海禁政策時の明、漢江の奇跡の韓国、などなど。古今東西の国家の繁栄の歴史を紐解き、そのメカニズムを探る一冊。
 
読みやすい文章、豊富な事例、筆者の幅広い教養などが見事にかみ合い、後世にまで残る大傑作と言っても過言ではない。時に衝撃的な考察によって、時に意外な新事実によって紡がれる、歴史学、経済学の大統一理論。いちおし