【書評】『チャヴ 弱者を敵視する社会』 オーウェン・ジョーンズ

「本書の狙いは、労働者階級の敵視の実態を明らかにすること」。そう語る筆者が綴る、弱者がさらに叩かれる世界の現実。
 
生活保護、移民、障碍者、ホームレスなど、現在の社会は弱者に同情と支援をもたらすのではなく、蔑視と排除とをもたらしている。これは日本に限った話ではなく、筆者の生まれた英国でも事情は同じである。労働者階級は分断され、かつての力を失い、嘲りの対象となった。それにより社会は大きく分断され、持てる者と持たざる者の格差は広がる一方である。我々はどこでどう道を誤ったのだろうか。この本にも明確な答えも、的確な対策も記載されていない。だが我々が何を選ぶべきか、そのヒントはもらえると思う。現代社会のありようを、見事に描き切った一冊。おすすめ