【書評】『社会心理学講義』 小坂井敏晶

「人間を理解するには、どのような角度からアプローチすればよいのだろうか」。筆者のそんな疑問から生まれた深遠な一冊。
 
社会心理学とは、「人間とは何か」という問いに答えることを命題とし、社会学、心理学、哲学の学際に存在する分野である。批判的な読書とは何か、プラシーボ効果はなぜ効くのか、「私」というものは意識のどこにいるのか、世界は正義に支えられているのは本当か、意志と行動とはどちらが先か、同一性と変化という相反する要素を両立させうるものは何か、権威と権力の違いはどこにあるのか、などなど。縦横無尽に繰り広げられる論理は、心地よい浮遊感とともに読者の感性を刺激する。知性とは、このような学際分野でこそ必要とされる資質であると再認識させられる一冊。座右に置いて繰り返し読みたくなる、中毒性のある一冊である。いちおし