【書評】『思考術』 大澤真幸

「生きることに対する違和感みたいなものを概念として捉えていくこと、それこそがライフワーク的なテーマにつながる」。そう語る筆者による、思考を深めるためのヒント。
 
条件反射のように出てくる答えは、たいていの場合本質をとらえていない。さらに驚きには不安が後続するが、その不安を大事にできるかどうかが、真に思考できるかどうかの決定的な分かれ道になる。まるでスキージャンプの選手が、着地への誘惑に抗してできるだけ我慢して飛距離を伸ばすように、深い思考のためには疑問を、問いを、長く持ち続けることが重要。このほかにも、様々なジャンルの書物を下敷きに、知性とは何か、思考とは何かという答えのない問いに挑む意欲作。おすすめ