【書評】『戦略参謀の仕事』 稲田将人

「参謀役は経営トップへの登竜門」。そう語る筆者による、企業の戦略参謀の目線から語る経営論。
 
日本企業では、たとえばGEのような次期経営者を育てる仕組みはあまり見られない。そんな中で、いくつかの優良企業では社長や事業責任者の機能の一部を代行する「参謀」として腕を磨き、社内からも信望を得ていく方法をとっている。そのような参謀役は何をすべきか、どのような人が参謀に向いているのか。参謀としての仕事の精度を上げる方法、参謀が社長と議論する時間を作るべき理由、困ったときに聞きに行くべき人物とは、なぜ多くの企業で現場作業員としての研修があるのか、企業が低迷状態に陥る理由、社内で無責任体制がはびこる理由、トヨタが安定して高収益を上げられるわけ、経営手法としてのPDCA、などなど。凡百の経営書とは一線を画する、人間心理や組織力学まで踏み込んだ内容は秀逸の一言に尽きる。「参謀とは非公式な役割であり、それゆえに自分自身のイニチアチブが重要」という筆者の言葉通り、現場からの戦略論。おすすめ