【書評】『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』 ブレイディみかこ

「社会が本当に変わるということは、地べたが変わるということだ」。英国における最底辺の託児所で働いた経験を基に語られる、寛容さを失っていく社会の記録。
 
筆者は保育士として、英国の底辺託児所やミドルクラス向けの保育園で働いた経験を持つ。折しも福祉が削られ、排外主義が台頭してきた時代。社会の底辺層が利用する託児所は社会の変化の影響をもろに受ける場所であった。外国人の子どもの増加、日本の子どもがおとなしく従順な理由、外国人がナショナリストになる理由、最も低い場所こそが政治の変化が最も顕著に表れる理由、などなど。上っ面の政治論ではなく、お花畑の理想主義でもない。現場のリアルを知る者だけが描ける、変わりゆく社会の現実とは。最も印象に残ったシーンは、地元の英国人を排斥しようとする移民を叱り飛ばすムスリム女性の話。有機物である本物の社会の内側で起こっている、ディープな現実がここにある。おすすめ