【書評】『セレンディピティ 点をつなぐ力』 クリスチャン・ブッシュ

運を結果につなげる方法について、様々な最新研究をまとめた一冊。
 
運も実力のうち、という言葉がある。だが運が実力なら、それを身に付けるにはどうすればいいのだろうか。セレンディピティの定義、セレンディピティの起こりやすい状況、イベントに参加する際にすべきこと、自分が何者かを知るメリット、などなど。幸運をはぐくむための知見が満載。今日から実行できる、具体的なワークアウトも有用な一冊。おすすめ

【書評】『モンク思考』  J・シェティ

「僕らにも、僧侶のような意識状態が必要じゃないだろうか?」。そんな筆者の疑問から始まる、自分に集中しするための思考のレッスン。
 
人類は誕生してこの方、様々な文明や技術を進歩させてきた。だが僧侶の教えは数千年前から変わらない。寛容さ、活力、生きがいなどのトピックとその内容は、数千年の時を経ても、現代の我々の心に響く。ではそのような僧侶の思考法とはどのようなものだろうか。嫌いな相手を受け入れる方法、自分が自分を見失う理由、自分に注目することの利点、ルーチンの意味、尊敬されるためにすべきこと、塩のたとえで見る人の在り方、真理を見つけた者を信頼すべきでない理由、人生で頼りにすべき人の4つのタイプ、などなど。サブタイトルにあるように、自分に集中し、心穏やかに生きるためのヒントが詰まった一冊。いちおし

【書評】『ソース焼きそばの謎』 塩崎省吾

縁日の屋台、土曜の昼食、BBQの締め、など様々なイメージで語られるソース焼きそば。その起源を追った一冊。
 
筆者は焼きそばの食べ歩きブログを運営するほど、焼きそば好きである。本職のITエンジニアの傍ら、日本全国、さらには海外まで焼きそばを食べ歩いている。そんな筆者が見つけた、ソース焼きそばの原点とは。大正時代が粉もんの転換期だった理由、うどん粉とメリケン粉の違い、日本で小麦粉食が広まったきっかけ、後がけソースの焼きそばがある理由、などなど。趣味人かくあるべしと言いたくなるような、自分の興味の赴くままに探求した成果。読めばきっと、ソース焼きそばがさらに好きになること請け合いの一冊。おすすめ

【書評】『米欧回覧実記』 久米邦武

時の政府首脳部の半分近くを2年近く派遣し、不平等条約改正や西洋文明の調査を目的とした岩倉使節団の非公式記録。
 
岩倉使節団は、木戸孝允大久保利通伊藤博文ら大臣クラスの政治家だけでなく、ジャーナリストの福地源一郎、東洋のルソーと呼ばれた思想家の中江兆民、後の三井財閥総帥の団琢磨、女子教育の先駆者の津田梅子、日露戦争終結の立役者の金子堅太郎など、バラエティに富んだ人々が随行していた。本書は、その一員である久米邦武が残した視察報告書である。米国が成功した理由、自主ということの本質、文明国が兵備を整える理由、進歩の本質、明治日本の製造業が粗雑だった理由、他国の製品の模倣をすべきでないわけ、などなど。泰平の眠りをむさぼっていた小国が、世界をリードする先進国の模様を瑞々しい感性でつづった一冊。おすすめ

【書評】『虐殺のスイッチ』 森達也

「なぜ人は優しいままで人を大量に殺せるのか」。そんな筆者の疑問から始まった、集団による虐殺のメカニズムを解き明かす一冊。
 
筆者はたった一人でつくった「A」というドキュメンタリー映画で、オウム真理教の中で出家信者と暮らし、その模様を取材したことでも知られている、筆者から見たオウム信者は、世間で言われているのとは違い、一人一人は優しく礼儀正しい人々であった。ではなぜ彼らが、残虐なテロ組織となっていったのだろうか。為政者が過ちを犯すとき、オウムが優しいままで人を殺せたわけ、宗教弾圧をすべきでない理由、良識ある人が虐殺に手を染めるまでの8段階、カンボジアがキリングフィールドを観光客に公開している理由、などなど。我々の中にある、虐殺のスイッチ。そのメカニズムを探る一冊。おすすめ

【書評】『ニュースの未来』 石戸諭

「ニュースとは新しい価値を創造するという意味で、クリエイティブなもの」。そう語る筆者による、ニュースの未来について。 これまでニュースを担ってきたテレビ、新聞、雑誌の凋落はいかんともしがたい。さらにインターネットの発展により、ニュースの持つ価値自体も変化している昨今。ニュースに未来はあるのか、筆者がよく問われる問いに、真正面から答えた一冊。ニュースの確からしさを増すもの、ニュースの3つの基本形、バイアスを排除するためにすべきこと、インターネットの時代にニュースに求められること、インターネット時代のニュースの王道、良いニュースの5つの要素、などなど。新聞社やWEBメディアで最前線の記者としてニュースを報じてきた筆者だからこそ描ける、ニュースの未来。ジャーナリストを目指す人も、そうでない人も、現代人必読の一冊。いちおし

【書評】『ガンダム世代への提言』 富野由悠季

ガンダムを作った男、富野由悠季の対談集。
 
「御大」の異名をとる富野由悠季に挑むのは、老若男女、大学教授から役者や経営者、詩人や杜氏、アスリートから宇宙飛行士まで、多士済々の面々。そんな彼ら彼女らとの対談で、富野が発した言葉とは。高邁な理想を実現するために最初にすべきこと、ノブレス・オブリージュの意味、襖や障子の真の機能、いい教員の条件、戦艦大和の歴史的意義、江戸時代や平安時代が平和であった理由、などなど。一流は一流を知るとの言葉通り、異分野でも、異分野だからこそ御大の深い洞察が冴えわたる一冊。おすすめ