【書評】『若き将軍の朝鮮戦争』 白 善燁

平壌一番乗りを果たした朝鮮戦争の英雄であり、33歳で韓国軍初の大将に任じられた筆者による回顧録
 
筆者は満州国軍官学校で軍人教育を受け、戦後は若くして軍の要職にあり、常に前線で朝鮮戦争を戦い抜いた。また朝鮮戦争の休戦会談においては韓国代表を務め、39歳で軍を退いてからは外交官として、交通大臣として、国策会社の社長としても活躍した伝説的な人物である。そんな人物の回顧録が、面白くないわけがない。戦前日本の崩壊をもたらした意外なきっかけ、米軍と比べた帝国陸軍の最大の問題点、ソ連軍や中国軍の戦術、日本の戦後復興を予見させたある出来事、秀吉の朝鮮出兵日清戦争から学んだ戦術、マッカーサーが解任された背景、人材育成がもたらした予想外の結末、などなど。常に前線にあって戦い抜いた指揮官だから言える、戦場の真実。さらにはともに戦った日本軍や米軍から学んだ人を活かす要諦とは。白眉は朝鮮戦争の手に汗握る戦記であり、戦場の息遣いすら感じられる迫真の描写である。だが一流の人々にもまれ、様々な分野で活躍した筆者ならではの人間に対する深い洞察も見逃せない。いちおし