【書評】『遅刻の誕生』 橋本毅彦

日本人の時間感覚はどこから来たのかを、様々な切り口から探った一冊。
 
明治初期に来日したお雇い外国人たちは、日本人はほとほと時間にルーズであり、これでは近代化など望むべくもないと嘆くのが常であった。ところが現在では、日本の電車は世界一時間に正確であることで知られている。15秒単位のダイヤで走る電車だけではなく、工場においては資材と時間が極限的に節約され、正しい時刻を永遠に指し続ける電波時計は日本のお家芸といっても過言ではない。明治以来の100年余りで、日本人はどのようにして時間規律を身に付けてきたのか。鉄道ダイヤ、労働管理、教育、家庭領域、暦、農村、などの切り口で、日本人の時間感覚の移り変わりを探る一冊。「遅刻」という新しい概念の誕生を通じて、当たり前だったものが別の当たり前に取って代わられるまでの社会の変化を、克明に記した一冊。おすすめ