【書評】『社会を知るためには』 筒井淳也

「社会は思い通りに動かせるものではない」という事を実感しないと、社会をちゃんと動かすことはできない」。そう語る筆者による、社会の入門書。
 
筆者は社会学者として、社会の様々なことを研究している。社会学は他の学問とは違い、「まだ知らないこと」は対象の側にあり、対象の方が専門家よりそのことに詳しいという側面を持っている。そんな日々の研究から生まれた、理屈ではない、現実の社会の様々なこと。深刻な問題が生じるのは誰のせいか、専門家が進むことの陥穽、社会変革が思ったような効果を挙げない理由、社会がわかりにくいわけ、社会に働く慣性の法則、理屈で考えることの緩さ、などなど。分らないからこそ、そこを出発点とする、「無知の知」のような社会学の考え方とは。複雑な世の中を読み解くヒントが詰まった一冊。おすすめ