【書評】『専門知はもういらないのか』 トム・ニコルズ

専門家と一般人の断絶という、21世紀型の民主主義の危機をまとめた一冊。
 
20世紀初頭まで、政治や知的活動はごく一部のエリートの選任事項であった。だが現在では、大学卒はありふれ、SNSの普及により誰もが発言できる時代になった。それは人々のリテラシーを高めるのではなく、専門知を尊重しない時代の幕開けでもあった。専門家の意見に面白味がない理由、大学教育のお寒い実態、SNSの功罪、民主主義という言葉の意味の変容、無知が恥ではなくなった理由、報道のエンタメ化、などなど。述べられているのは米国の話でありながら、本邦でも状況はほとんど変わっていないことに驚かされる。専門知を活かすために、民主主義を活かすために、今の時代の必読書といえる一冊。おすすめ