【書評】『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』 城戸 久枝

「父は、私の父になるまでに、どんな道を歩んできたんだろうか」。日本生まれの中国残留孤児二世である筆者による、自分につながる歴史をめぐるノンフィクション。
 
筆者の父は、中国残留孤児だった。三人称で語られる第一部では、満州国軍人であった祖父の話、敗戦とそこからの逃避行、中国での養父母との暮らし、奇跡の帰国と日本での日々、そして養母との再会までの物語。一転して一人称で語られる第二部では、筆者自身が中国に興味を持ち、中国への留学、学業の傍ら父のゆかりの地を訪ねる日々、帰国後に知り合った元残留孤児のこと、そして父の「故郷」への再訪までのルポルタージュ
 
波乱万丈の物語を、淡々と描ききった筆者の力量は、これがデビュー作とはにわかには信じられないほどである。深く深くため息をつきたくなるような、それでいて心が温かく満たされていくような、不思議な読後感。自分もまた、教科書で習った「歴史」と、今の自分とのつながりを探す旅に出たくなる一冊。いちおし