2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】『スコーレNo.4』 宮下奈都

軽快かつ瑞々しい描写で、1人の女性の成長する姿を描いた小説。 「スコーレ」とはギリシア語で余暇や真理探究を表す言葉で、「スクール」の語源となった言葉。主人公が家族、恋愛、就職、結婚という4つのスコーレを通じて成長する物語。ストーリー展開とか、…

【書評】 『シュガーマンのマーケティング30の法則』 ジョセフ・シュガーマン

「心理的トリガー、それはお客様の心に働きかけ、心を動かし、ついには購入を決めさせてしまう」。そう語る筆者による、マーケティングを成功させる30のコツ。 最初に簡単なものから買わせる、欠点を最初に提示する、製品の一部でも手に取ってもらう、権威に…

【書評】 『非属の才能』 山田玲司

「才能というものは"どこにも属せない感覚"のなかにこそある」。そう語る筆者による、皆と違うことのすすめ。 空気を読む、周りと合わせる、行列に並ぶ、意味もないうさぎ跳びをさせる、などなど。この国では「人と違う」をとをするのがかくも難しい。そうい…

【書評】 『わかりあえないことから』 平田オリザ

「わかりあえないところから出発するコミュニケーションというものを考えてみたい」。演劇人として様々な人々と関わってきた筆者による、価値観が多様化した時代のコミュニケーション論。 子どものコミュニケーション能力、ロボットを人間らしいと感じる瞬間…

【書評】 『廃墟の零年 1945』 イアン・ブルマ

1945年。全世界があまねく発狂した時代が終わり、廃墟からの再出発の一年の記録。 それは、希望に満ちた年になるはずであった。5月に欧州で、8月にアジアで、戦争は終わりを告げた。人類は輝かしい再生の歴史を歩み始めるはずであった。「血はさらなる血を欲…

【書評】 『FAKEな平成史』 森達也

「報道の自由度の低い日本は、疑似的民主主義国家であり、疑似的独裁国家である」。そう語る筆者による、FAKEな時代の記録。 筆者はディレクターとして、平成が始まったころからドキュメンタリーを撮り続けてきた。その筆者の目から見た、平成日本のFAKEな実…

【書評】 『ピクサー流 創造するちから』 エド・キャットムル

「目指すべきは楽になることではなく、卓越すること」。ピクサー・アニメーション・スタジオの共同創設者による、卓越した組織であるための指南書。 筆者は、会社をつくる事は開拓者の幌馬車に似ていると語る。目的地に辿り着けば、去る者も来る者も出てくる…

【書評】 『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』

【上巻】 ゲーム界の巨人、任天堂に挑んだセガの戦いの記録。 舞台は1990年代アメリカ。30億ドルのゲーム市場を支配するのは、市場シェア90%を誇る任天堂であった。トム・カリンスキーがセガ・オブ・アメリカのCEOに就任し、任天堂に戦いを挑む。巨人の弱点…

【書評】 『銀翼のアルチザン』 長島芳明

中島飛行機技師長、小山悌(やすし)の伝記。 元々は海軍士官であった中島知久平が創業した、軍用機専用メーカー、中島飛行機。東北帝国大学を出ながら、当時は田舎の一企業でしかなかった中島飛行機に就職した小山悌。彼の入社を機に、中島飛行機は飛躍の時を…

【書評】 『会社苦いかしょっぱいか 社長と社員の日本文化史』 パオロ・マッツァリーノ

日本文化研究家である筆者による、「昔は良かった」を笑い飛ばす一冊。 電車で化粧する女性、太平洋戦争でのPTSD、せこい出張術、週休二日制への険しい道のり、生意気で使えない新入社員、などなど。現代の悪しき風潮と言われていることも、その起源をたどれ…

【書評】 『日本論の視座』 網野善彦

日本という社会はどこから来て、どのように成立したのか。民俗歴史学の泰斗による、英雄の登場しない日本論。 「日本は島国」「日本は単一民族国家」「稲作、米食は日本民族の本質」などの、巷間言われている通説から離れてみれば、日本史は驚くほど豊かな側…

【書評】 『旅人』 湯川秀樹

日本人初のノーベル賞を受賞した物理学者、湯川秀樹の自伝。 生い立ちから、学生時代のこと、そして物理学者を志し、中間子の理論を発見するまで。無口な文学少年が、いかに理論物理学の世界へ羽ばたいていったかを、瑞々しい文章で描く。大きな事件があるわ…

【書評】 『最高機密エージェント』 デイヴィッド・E・ホフマン

冷戦下のモスクワで暗躍した、CIAのエージェントたちの物語。 アドルフ・トルカチェフ。ソ連の軍事技術研究所に勤務するエンジニアであり、職場で得た情報をCIAに渡していた、冷戦史上最大級のスパイである。彼が盗み出した情報から、アメリカはソ連のレーダ…

【書評】 『ライト兄弟 イノベーション・マインドの力』 デヴィッド・マカルー

人類初の飛行を成し遂げた、ライト兄弟の伝記。 1903年12月17日。ライト兄弟の伝記の多くは、その日で終わっている。この本は、その日から始まると言っても過言ではない。彼らの偉業を疑う人々との闘い、米国陸軍からの冷たい仕打ち、フランスでの売込の日々…

【書評】 『〈弱いロボット〉の思考』 岡田美智男

ロボット研究の第一人者による、人とロボット、その新たな関係論。 ロボットはどんどん高機能で、人の助けを借りずに様々なことをできる存在になった。だがそれは、本当にロボットの目指すべき方向なのだろうか?たとえば赤ちゃんは、1人では何もできない「…

【書評】 『今を生きるための現代詩』 渡辺十絲子

「詩とは、ただ純粋な「ことば」である」。そう語る筆者による、詩を楽しむための指南書。 いつから我々は、詩を楽しむことを忘れてしまったのだろうか。詩を読んでそのよさを味わえるというのは、解釈や価値判断ができるということではない。わかるもの、わ…

【書評】 『そろそろ、人工知能の真実を話そう』 ジャン・ガブリエル・ガナシア

「シンギュラリティの主張は、科学的証明がされていないという点で、認識論的に間違っている」。パリ第六大学でAI研究チームを率いる哲学者が語る、人工知能の真実とは。 シンギュラリティはムーアの法則などの納的推論に基づいているが、非連続性の近傍では…

ブログ、はじめました

ブログ、はじめました。 書評を中心に、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくっていこうと思います。