【書評】『米欧回覧実記』 久米邦武

時の政府首脳部の半分近くを2年近く派遣し、不平等条約改正や西洋文明の調査を目的とした岩倉使節団の非公式記録。
 
岩倉使節団は、木戸孝允大久保利通伊藤博文ら大臣クラスの政治家だけでなく、ジャーナリストの福地源一郎、東洋のルソーと呼ばれた思想家の中江兆民、後の三井財閥総帥の団琢磨、女子教育の先駆者の津田梅子、日露戦争終結の立役者の金子堅太郎など、バラエティに富んだ人々が随行していた。本書は、その一員である久米邦武が残した視察報告書である。米国が成功した理由、自主ということの本質、文明国が兵備を整える理由、進歩の本質、明治日本の製造業が粗雑だった理由、他国の製品の模倣をすべきでないわけ、などなど。泰平の眠りをむさぼっていた小国が、世界をリードする先進国の模様を瑞々しい感性でつづった一冊。おすすめ