2019-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『ものづくり「超」革命』 エリック・シェイファー、デビッド・ソビー

「変化の風が吹く時には、壁を作る人もいれば、風車を建てる人もいる」。そんな中国の古いことわざの引用から始まる、デジタル革命を乗り切る指南書。 製造業は今、第四次産業革命とも言われる変革の真っただ中にいる。筆者によると製品の価値の源泉のうち、…

【書評】『リクルートのすごい構”創”力』 杉田浩章

スタディサプリ、リクナビ、ゼクシィ、などなど、これまでになかった様々なサービスを展開するリクルート。経営コンサルタントとして同社に関わってきた筆者による、アイディアを事業に仕上げるポイント。 不の発見の「不」の定義とは、リボンモデルによる事…

【書評】『「家族の幸せ」の経済学』 山口 慎太郎

「「当たり前」をデータできちんと確認しておくことが、私たちの社会の正しい理解への第一歩」。そう語る筆者による、結婚、出産、子育ての行動経済学。 「帝王切開すると落ち着きのない子に育つ」、「母乳で頭が良くなる」、「3歳までは母親がつきっきりで…

【書評】『ふだんづかいの倫理学』 平尾 昌宏

「人によって価値観は違う。だからこそ、倫理学が必要」。そう語る筆者による、人間のよい生き方についての学問、倫理学の入門書。 タイトルに「ふだんづかい」とあるように、学問的な厳密さよりも、日常で使えるような分かりやすさを重視した本である。倫理…

【書評】『ユダヤ人、世界と貨幣』 ジャック・アタリ

自らもユダヤ人である筆者が語る、ユダヤ人4000年の歴史。 筆者はフランス政財界に大きな影響力を持ち、「真の大統領」とまで言われる、欧州を代表する知性の持ち主である。膨大な知識から紡ぎだされる、ユダヤ人の歴史と世界に与えた影響について。ユダヤ人…

【書評】『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 遥洋子

タレントである筆者が 上野千鶴子ゼミでの経験を綴ったエッセイ。 この本ほど、タイトルと中身の乖離が甚だしい本も珍しい。タイトルから想像される荒々しい内容ではなく、それまで学問らしい学問をしてこなかった筆者が感じた、瑞々しい感性で綴る学問の面…

【書評】『『銀河英雄伝説』にまなぶ政治学』 杉浦功一、大庭弘継

タイトル通り、銀河英雄伝説を例にとりながら、政治学を学ぶ一冊。 30年以上前に完結した作品でありながら、いまだに根強いファンを持つ銀河英雄伝説。戦略戦術の要素ばかりではなく、専制政治と民主政治という異なる政治体制の戦いの物語でもある。こういっ…

【書評】『お金2.0』 佐藤航陽

「今起きているのは、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということ」。そう語る筆者による、21世紀型のお金の形について。 フィンテック、仮想通貨、シェアリングエコノミー、評価経済、など、新しい経済の形が生まれつ…

【書評】『震災があっても続ける』 矢野 陽子

岩手県山田町で毎年9月に行われている、山田祭を追ったノンフィクション。 山田祭は、山田八幡宮と大杉神社の2つの神幸祭からなる。暴れ神輿が有名だが、、神楽、さんさ、剣舞、鹿舞(ししまい)、八木節、虎舞などの各団体が町中を練り歩く。山田町の人は新年…

【書評】『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』 鈴木 透

「アメリカ独立により、ローカル、ナショナル、インターナショナルの三要素が絶妙に共存する形で、食文化の基層が形成された」。そう語る筆者による、食を通じたアメリカ文化論。 アメリカは移民大国であり、それゆえに常に変わり続ける国家である。食の分野…

【書評】『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』 ルイス・ダートネル

「人間の知識は広く拡散した集合的なものであり、社会を動かすプロセスを十分に知っている人間は誰一人いない(」。そう語る筆者による、再び文明社会を築くための指南書。 パンデミックか、大災害か、核戦争か、隕石の衝突か。理由は何でもいいが、大破局後…

【書評】『138億年宇宙の旅』 クリストフ・ガルファール

138億年前、宇宙はどうやってできたのか。宇宙はどのようになっているのか。宇宙はこれからどこへ向かうのか。考え始めるときりがないこれらの問いに答える、最先端宇宙論の解説書。 筆者は「車いすの天才」ホーキングの下で学び、サイエンスライターとして…

【書評】『野生化するイノベーション』 清水洋

「いったん生まれた技術は、野生動物と同様に、その移動を制限しようとしてもなかなかうまくいかない」。そう語る筆者による、イノベーションの経験的パターンの解説書。 イノベーションには一定の習性があり、自由に移動し、破壊的な側面を持つ。あたかも野…

【書評】『ローマ盛衰原因論』 モンテスキュー

「社会が成立する時、制度を作るのは国家の元首たちであり、それから後に国家の元首を作るのは制度である」。啓蒙思想家である筆者が語る、ローマ帝国の盛衰。 筆者のモンテスキューが生きた時代は、アンシャン・レジームの末期であり、絢爛たるブルボン王朝…

【書評】『安部修仁 逆境の経営学』 戸田顕司

地獄を2度見た男が語る、経営の本質。 かつて吉野家は、1980年の倒産、2004年の牛丼販売停止という2度の地獄を見た。本書の主人公である安部修仁は、1980年には営業部長として、2004年には社長として危機への対応を指揮した。その経験から導き出された、実践…

【書評】『石橋を叩けば渡れない。』 西堀栄三郎

「勇気が自信に先行し、経験が勇気を作る」。そう語る筆者による、創造的生き方のススメ。 筆者は技術者として活躍しただけでなく、第一次南極越冬隊の隊長を務めるなど探検家としても名を馳せた人物である。科学と技術の違い、知識の捉え方、リスクとの付き…

【書評】『世界史の誕生』 岡田英弘

「歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈する営み」。そう語る筆者による、本当の意味での「世界史」の指南書。 世界に文明は数あれど、自前の歴史文化を持っているのは、地中…

【書評】『成熟社会の経済学』 小野善康

「成熟社会にとっての国際競争力とは、自国の人々が喜ぶモノやサービスを見つけ出す能力、つまり内需を創り出す能力のこと」。そう語る筆者による、成熟社会での長期不況を克服する処方箋。 日本のような成熟社会と、発展途上国とでは、経済の仕組みが異なる…

【書評】『捨てられる銀行3 未来の金融』 橋本 卓典

「会社組織の成否は、会計やコスト計算では数値化できない「計測できない利益や損失」によって決定づけられている」そう語る筆者による、金融システムの未来について。 筆者によると、金融とは「顧客の一方的不幸」を商売としている仕事になる。金融の不確実…

【書評】 『キュリー夫人』 エーヴ・キュリー

世界で最も有名な科学者、マリー・キュリー。その実の娘による伝記。 マーニャ・スクウォドフスキ、後のキュリー夫人は他国の支配を受け、後に消滅するポーランドという国に生まれた。パリで学び、後に夫となるピエール・キュリーと出会った。彼との共同研究…

【書評】『ブランド戦略シナリオ』 阿久津聡

「ブランドは文脈を蓄える器であり、その価値を高めるためには、豊かで効果的な文脈を持たせてやらねばならない」。そう語る筆者による、ブランドの作り方。 ブランドには無形性、間接性、多層性、関係性の4つの特徴がある。ブランド・アイデンティティを構…

【書評】『ウェブ進化論』『ウェブ時代をゆく』 梅田望夫

「ウェブ進化という大変化に直面している私たちの生涯は、「一身にして二生を経るが如」しだと思う」。そう語る筆者による、ウェブ時代でいかに生きるかの指南書。 筆者はインターネット黎明期からシリコンバレーに住み、その変化と進化を間近で体験してきた…

【書評】『経営戦略の思考法』 沼上幹

経営戦略の理論から実践にかけて、数多の学派や事例や心理を網羅した、経営戦略論の決定版。 戦略策定のために絶対に必要なもの、不完全な状態でも決断を下すべき理由、付加価値を求める公式、戦略的思考を身につけるためにまずやるべきこと、同じ機能でも価…

【書評】『論文捏造』 村松秀

世界的な権威を持つ研究所で行われた、論文捏造を巡るノンフィクション。 21世紀初頭、アインシュタインやハイゼンベルクらと並び称せられた天才科学者がいた。弱冠29歳ながら、彗星のように物理学会に現れ、超伝導の分野でそれまでの常識を覆す大発見を連発…

【書評】『「砂漠の狐」ロンメル』 大木毅

「ロンメルは蔑みを抱いて、死んでいったのか。だとすれば、その感情は誰に向けられていたのか」。そんな筆者の疑問から始まった、「砂漠の狐」の評伝。 エルヴィン・ヨハネル・オイゲン・ロンメル。ドイツ国防軍で最も有名な軍人であり、敵である連合軍から…

【書評】『アメリカは食べる。』 東理夫

「アメリカは移民の集まりであるからこそ、お互いに影響を与え合い、アメリカの食は変化していかざるを得ない宿命を負っている」。そう語る筆者による、アメリカの食のルポルタージュ。 アメリカ食と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ハンバーガー、コーン…

【書評】『イスラーム思想を読みとく』 松山洋平

「イスラームは「信条の体系」であるから、その世界観を真実・事実として信じるか否かが問題」。そう語る、イスラーム思想史の研究家である筆者による、イスラームの教えの入門書。 近年、中東以外でも急速に勢力を拡大しつつある、イスラーム。その教えは我…

【書評】『トランス・サイエンスの時代』 小林博司

「現代は科学と政治の領域が次第に交錯していくトランス・サイエンス状態にある」。そう語る筆者による、科学技術と社会の関係について。 かつて科学は、誰が見ても間違いのない客観的真理を政治権力へと供給するという立場であった。だが近年においては、「…

【書評】『セイラー教授の行動経済学入門』 リチャード・セイラー

心理学と経済学を融合させた、行動経済学。その泰斗による入門書。 伝統的な経済学は、誰もが「最も合理的な行動」を取ることを前提としている。だが誰もが身に覚えがあるように、人は体に悪いとわかっていながら煙草を止められなかったり、期待値が低いと知…

【書評】『海民と日本社会』 網野善彦

陸の農業からの視点でしか語られてこなかった日本史に、海民という新たな視点を加えた筆者。その講演録。 「百姓」は農民のことではない。今までの歴史認識を覆す「網野史観」を確立した筆者。江戸時代の能登の「百姓」の研究から、「百の姓」としての、商業…