2022-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『発酵文化人類学』 小倉 ヒラク

「発酵+文化人類学」という、交わらないはずの線をつなげた学問の書。 筆者は発酵と微生物の研究者であり、また文化人類学の学徒でもある。そんな筆者だからこそできた、発酵から見た文化と風土と経済と芸術と。国内の発酵産業の市場規模、腐敗と発酵の違い…

【書評】『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』 アビジット・V・バナジー ,エステル・デュフロ

「本書を書いたのは、希望を持ち続けるためである」。ノーベル経済学賞を受賞した筆者による、より良い世界のために経済学ができること。 世界は、課題で満ちている。経済学が関わる範疇だけでも、移民、貿易、成長、不平等、環境、などなど。そういった課題…

【書評】『地図から消えるローカル線』 新谷幸太郎

「人口減少下で持続可能なインフラをどう構築するか」という問いに対し、鉄道という観点からその課題を俯瞰した一冊。 筆者らは野村総研の有志で、自主研究をまとめたものである。ローカル線の維持費用、黒字路線になるために必要な乗客数、地方が抱える鉄道…

【書評】『20歳の自分に受けさせたい文章講義』 古賀史健

「「書く技術」を身に付けることは、「考える技術」を身に付けること」。そう語る筆者による、文章の書き方講座。 我々は、様々な文章を書くことを求められる。だがその文章の書き方自体は、みな我流で行っている。ライターとして活躍する筆者が、自分の持つ…

【書評】『人を選ぶ技術』 小野壮彦

人を見る目がある、とはどういう状態か。経営層のヘッドハンターとして活躍した筆者による、人を見る目の科学的な鍛え方。 筆者によると、人は2つの軸で分けられる。優秀か平凡か、善か悪か。人材を採用する際、誰もが優秀な善人を採りたいと思う。そして悪…

【書評】『シベリア出兵』 麻田雅文

サブタイトルは『近代日本の忘れられた七年戦争』。知られざるシベリア出兵の内実を明かした一冊。 その名の通り、長きにわたる年月と、膨大な戦費と、数多くの犠牲を出したシベリア出兵。だがその結果として、得られたものはほとんどなく、失ったものがはる…

【書評】『現代経済学の直観的方法』 長沼 伸一郎

「我々の経済社会は、欲望を満足させて利益を極大化させようとするただ一つの力で動いている」。そう語る筆者による、経済学のオールインワン中級書。 筆者は物理学者として、様々な著作を著している。難解な物理学や、歴史、哲学などに造詣の深い人は数多い…

【書評】『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 ベンジャミン・ハーディ

「あなたは環境の産物だが、その環境はあなた自身が積極的に下した決意でなければならない」。そう語る筆者による、人の行動を司る法則。 人は自分の意志を持っている。だがその意志が続かないのはなぜだろうか。ダイエットも、新年の誓いも、スマホ絶ちも、…

【書評】『取材・執筆・推敲〜書く人の教科書』 古賀史健

「ライターの教科書」というコンセプトでつくられた、書く人のための指南書。 筆者は様々な書籍の執筆、編集に携わり、その累計部数は1100万部を超える。そんな筆者が、次代のライターを育成し、たしかな技術を伝えるために書いた一冊。編集者の仕事は何か、…

【書評】『「一万円選書」でつながる架け橋』 岩田徹

一万円であなたに合った本をセレクトする、そんなサービスを始めた本屋のつぶやき。 筆者が経営するいわた書店は、北海道の小さな町の、小さな本屋である。出版業界のご多分に漏れず、売上は振るわず、向かい風ばかり。試行錯誤の中始めた「一万円選書」も、…

【書評】『論争 関ケ原合戦』 笠谷和比古

天下分け目の戦い、関ヶ原合戦。日本一有名な合戦でありながら、いまだに様々な論争を呼ぶこの合戦に対し、最新の歴史研究で挑む一冊。 なぜ小山評定で大名たちの態度決定を迫る必要があったのか、なぜ小山評定後に家康は江戸に留まったのか、なぜその後家康…

【書評】『なぜ世界は存在しないのか』 マルクス・ガブリエル

「世界は存在しない」。そう主張する筆者による、新しい哲学の原則。 筆者は新進気鋭の哲学者として、世界的に注目され、著書も数多い。「新しい実在論」を提唱する筆者が、その哲学の一端を垣間見せる。形而上学やポストモダンといった哲学は何なのか、バタ…

【書評】『子どもは40000回質問する』 イアン・レズリー

「好奇心とは、後から振り返ってみてその価値が分かる」。そう語る筆者による、好奇心についての考察。 ヒトと類人猿との差は、思いのほか小さい。類人猿の中には道具を用いるだけでなく、言語を習得してヒトとコミュニケーションを取るものまでいる。だが類…

【書評】『人生と財産 私の財産告白』 本多静六

「日本のウォーレン・バフェット」の異名をとる、本多清六の自叙伝。 本多清六は明治から昭和にかけて、林学者、造園家として活躍した人物である。日比谷公園や明治神宮など数多くの公園の設計に携わり、「公園の父」とも呼ばれる。だが彼の名を有名にしたの…

【書評】『生命の惑星』 チャールズ・H・ラングミューアー ,ウォリー・ブロッカー

サブタイトルは「ビッグバンから人類までの地球の進化」。地球に生命が満ちるまでの大統一理論。 母なる惑星、地球。そこには生命が満ち、各々の繁栄を謳歌している。だがこの生命の惑星は、どのようにして現在の姿になったのか。筆者はその回答の始まりを、…

【書評】『人間の器量』 福田和也

「なぜ日本人はかくも小粒になったのか」。そんな筆者の疑問から生まれた、器の大きさに関する考察。 現在の日本に、優れた人はいる、感じのいい人はいる。しかし大きい人、人物と呼べる人は、どこにもいなくなった。それはなぜなのか、どうすれば器を大きく…

【書評】『フロー体験 喜びの現象学』 M・チクセントミハイ

喜び、創造、生活への深い没入過程などの、フローと筆者の呼ぶ体験についての考察。 人は幸福を求める生き物である。だが幸福とはどのような状態を指すのか、そして幸福になるにはどうすればいいのか。筆者に限らず、多くの人が抱く疑問への、筆者なりの考察…

【書評】『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』 八木仁平

「自己理解の3本柱とは、好きなこと、得意なこと、大事なこと」。そう語る筆者による、「やりたいこと」の見つけ方の指南書。 現代の日本においては、選択肢は山のようにある。だがそれゆえに、自分が真にすべきこと、やりたいことが見つかりにくくなってい…

【書評】『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』 中神康議

「投資家の思考と技術」を経営に取り込むことで、皆が豊かになる道筋を示す一冊。 筆者は経営コンサルタントを経て、投資助言会社を設立。「働く株主」というコンセプトのもと、投資先企業の経営者とともに企業価値向上のために汗をかいている。そんな筆者が…

【書評】『キャリアデザイン入門2』 大久保幸夫

「ミドル以降のキャリアこそ、解決すべき課題が多くある」。そう語る筆者による、ミドル以降のキャリア論。 若者のキャリアについて書かれた本は数多くあるが、ミドル以降のキャリアについて書かれた本は、驚くほど少ない。だが日本のビジネスパーソンの弱み…

【書評】『世界がわかる宗教社会学入門』 橋爪大三郎

「宗教を知らなければ、世界の人々を理解することはできない」。そう語る筆者による、世界の主要宗教の入門書。 日本人は正月に神社に行き、結婚式はキリスト教で行い、葬式は仏教で行う。宗教に無頓着だから、他の人々の信仰への誤解も多い。ユダヤ教がエル…

【書評】『ヘンな科学 “イグノーベル賞" 研究40講』 五十嵐 杏南

「裏ノーベル賞」「ノーベル賞のパロディー」として知られる、イグノーベル賞。綺羅星のごとき研究の中から、40個を紹介した一冊。 人類の英知を結集させ、科学は進歩してきた。その恩恵の上に、我々の便利で快適な生活は成り立っている。だが全ての科学者が…

【書評】『教育格差』 松岡亮二

「日本の教育においては、制度を変更することが目的化し、その「改革」の帰結についてはほとんど検証されない」。そう語る筆者による、データに基づく教育格差の実態。 日本においては、出身家庭と地域によって子供の最終学歴は決まり、それは収入や職業など…

【書評】『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 ターリ シャーロット

「ある信念が、それ1つだけで存在することはめったにない」。そう語る筆者による、説得力と影響力の科学。 三種混合ワクチンが自閉症の原因となるというデマがある。これは数多い調査研究によって、長年にわたり否定され続けてきた。だがそれでも、このデマ…

【書評】『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』 庵野拓将

スポーツ科学やスポーツ栄養学などを基に、「科学的に正しい」筋トレ方法を指南する一冊。 筆者は理学療法士として、医学博士として、トレーナーとして、延べ6万人以上の体づくりにかかわってきた。ここ10年ほどは筋トレに関する学術研究は目覚ましい発展を…

【書評】『禍いの科学』  ポール・A・オフィット

「全てのものには代償があり、ただ一つの問題はその代償の大きさだけだ」。そう語る筆者による、科学の革新と進歩の話。 科学のたゆまぬ進歩により、我々の生活は日々向上し、豊かになっている。だが時には、科学も誤りを犯し、禍を及ぼす。3歩進んで2歩下が…

【書評】『マイノリティデザイン』 澤田智洋

「ピンチや弱さといった「マイノリティ性」は多様だからこそ、そこから生まれるアイディアも独創的になる」。そう語る筆者による、誰もが持つマイノリティ性から価値を生み出す方法論。 筆者はコピーライターとして活躍していたが、ある出来事をきっかけに、…

【書評】『昭和の怪物 七つの謎』 保阪正康

「歴史の史実の一つ一つには、当事者だけが理解できる何かが隠れている」。そう語る筆者による、昭和の怪物たちの評伝集。 東条英機、石原莞爾、犬養毅、瀬島龍三など、戦前から戦後にかけての歴史上の人物たち。彼らの近親者を含む、延べ4000人以上へのイン…

【書評】『すべての働く人のための新しい経営学』 三谷宏治

「経営学という学問はない」。そう語る筆者による、専門分野の束であった経営学の目的別入門書。 経営学はあまりに幅広く、単体で扱うことはできない。そのためビジネスの初学者は、各専門分野の入門書をバラバラに読むしかなかった。対して本書は、レベルや…

【書評】『つながり』 ニコラス・A・クリスタキス、ジェイムズ・H・ファウラー

複雑で美しく、かつ精巧で入り組み、至る所に存在する社会的ネットワーク。その形成と働き、影響について解説した一冊。 SNSの発展により、我々は先祖に比べて驚くほど多くのつながりを得て、そして維持することができるようになった。そういったつながり、…