2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】『A』 森達也

「オウムの中から見ると、外の世界はどう映るのだろう?」。そんな疑問を持った筆者は、オウムの中に入り込んでドキュメンタリーを撮り始める。1995年という、誰もがオウムを敵視し、報道が沸騰していた時期。オウムの中から見た世間は、オウムの中と同様に…

【書評】『野蛮人の図書室』 佐藤優

「知の怪物」として知られる筆者による、真の教養を身に付けるための読書ガイド。 我々は野蛮人である、と筆者は喝破する。では野蛮人を抜け出して、教養人になるためにはどうすればいいか。そのためには自分の頭で考えること、その代理経験として読書をする…

【書評】『死のテレビ実験』 クリストフ・ニック

「テレビの行動の基準にあるのが「面白ければ何をやってもいい」という価値観」。そう語る筆者による、もう一つのミルグラム実験の記録。 人はどこまで権威に服従するか。その答えを探るべく、筆者は偽のテレビ番組を企画し、参加者が他人に電気ショックを与…

【書評】『きけわだつみのこえ』

「俺は俺の生活を生きていきたい。何があっても」 先の戦争で亡くなった、戦没学生の手記。ある者は幼い子どもを残して、ある者は人生をかけた研究を中断して、ある者は戦争の意義自体に疑問を感じながら、戦場の露と消えて行った。戦局我に利あらず、勝利へ…

【書評】『経済学者 日本の最貧困地域に挑む 』 鈴木亘

日本の異世界、あいりん地区。その地の長年の懸案を一気に解決しようとする、西成特区構想。ひょんなことからその構想の推進役となった一経済学者による、3年8か月もの闘いの記録。 元々銀行員として、経済学者として活躍してきた筆者。行政の仕事も、地域振…

【書評】『ゼロ・トゥ・ワン』 ピーター・ティール

「おなじみのやり方を繰り返せば、1がnになる。新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる」。そう語る筆者による、ゼロから1を生み出すための指南書。 独占こそが富を生む。だから独占しやすい小さな市場から始める。競争は資本主義と対極にある。独占企業…

【書評】『自由をつくる、自在に生きる』 森博嗣

「自由とは、ただ自分の思った通りに行動できること」。そう語る筆者による、自由に生きるための指南書。 空気を読む、周りに合わせる、不合理でもルールに従う、流行を追う、拘る、などなど。「人類はもともと支配されやすい動物」と筆者が語るように、自由…

【書評】『習得への情熱』 ジョッシュ・ウェイツキン

かつてチェスの神童として世界大会で優秀な成績を収め、22歳から習い始めた太極拳でも世界選手権のタイトルを獲り、ブラジリアン柔術でも屈指の実力を誇る筆者。種類の異なる分野で次々と頂点を極めた筆者による、なにかを習得するための方法論。 「頂点に立…

【書評】『未完のファシズム』 片山杜秀

「戦時の日本は強力政治や総力戦・総動員体制に失敗し、その意味では未完のファシズムとも言える」。そう語る筆者による、昭和の軍人たちが何を考え、いかに1945年の滅亡へと至ったかの記録。 筆者はこの物語を、滅亡の30年前から始める。青島という局地戦と…

【書評】『われらの子ども』 ロバート・D・パットナム

「誰の子どもであっても、われらの子どもが困っているなら、その面倒を見る責任はわれら全てが負っている」。そう語る筆者による、米国における教育格差に迫った意欲作。 アメリカンドリームという言葉は、すでに死語になりつつある。それを支えた機会と社会…

【書評】『グローバル・ジャーナリズム──国際スクープの舞台裏』 澤康臣

長年調査報道に携わってきた筆者が語る、ジャーナリズムの現状とあるべき姿とは。 世界を震撼させたパナマ文書。それは400名近いジャーナリストがグローバルに協力して成功させた、調査報道の金字塔とも言うべき出来事であった。そのパナマ文書の舞台裏から…

【書評】『愛と怒りの行動経済学』 エヤル・ヴィンター

感情面から行動経済学を解説した一冊。 なぜ人は利他的行為を取るのか、なぜ社会には怒りをあらわにする人が目立つのか、なぜ災害時に人は親切になるのか、なぜ男性が年上の夫婦が多いのか、なぜ謙虚な人が成功できるのか、などなど。この社会の「当たり前」…

【書評】『ブロックチェーン・レボリューション』 ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット

「たいていの技術は末端の仕事を自由化しようとするが、ブロックチェーンは中央の仕事を自動化する」。そう語る筆者による、ブロックチェーン技術の入門書。 ブロックチェーンの基礎からその仕組み、そして世界をいかに変えていくかまでを解説した一冊。ブロ…