2023-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『When 完璧なタイミングを科学する』 ダニエル・ピンク

ものごとを為すのに、最適なタイミングは何か。そんな筆者の疑問から始まった、"How to"ではなく"When to"の本。 何かをするためには、タイミングが重要である。だがそのタイミングを科学的に分析した一冊。朝型人間と夜型人間の違い、運動を午前にするメリ…

【書評】『文明の血液』 湯浅赳男

「文明の血液」たる、貨幣から見た世界史。 偉大な文明を築き、そして維持していくためには、先立つものが必要である。貨幣という切り口から見た、メソポタミアから古代ギリシア、イスラーム帝国、古代中国、ヴァイキング、大航海時代、世界大戦の歴史。スパ…

【書評】『文明の人口史』 湯浅赳男 

人口という切り口から、世界史と人類史を紐解く一冊。 世界の人口は80億人を超え、増え続けている。だが日本をはじめとする先進国は、少子化による人口減少が課題となっている。歴史から見て、現代のこの状況は特異点なのか、それとも歴史の常態なのか。農業…

【書評】 『多拠点で働く 建築・まちづくりのこれから』

場所にとらわれず働く。コロナ禍を経て市民権を獲得した、新しい働き方を実践する人々の記録。 人類は、移動する生物である。誕生の地アフリカを出て世界に広がったように、我々のDNAには移動することが刻み込まれている。本書で紹介されている9組もまた、1…

【書評】『防災アプリ特務機関NERV』 川口穣 

日本最大の防災アプリであり、Xアカウントである特務機関NERV。謎に包まれた機関の、内実を探ったノンフィクション。 特務機関NERVとは、エヴァンゲリオンシリーズに登場する、使徒殲滅を主要任務とする架空の組織である。そしてまた、災害情報を最速で配信…

【書評】『人生後半の戦略書』 アーサー・C・ブルックス

「多くの人が、キャリアと体力と気力の落ち込みは避けられない」。そう語る筆者による、人生とキャリアを再構築する方法。 高いスキルを要する職業であればほぼ例外なく、30代後半から50代前半にキャリアが落ち込み始める。しかもピークが高ければ高いほど、…

【書評】『異彩を、放て。』 松田 文登, 松田 崇弥

「既存の構造をひっくり返して逆転現象を起こすことで、世の中の「当たり前」がぐにゃりと揺らぎ、「常識」が覆る」。そう語る筆者による、福祉とアートの新しい関係。 筆者は双子の兄弟で会社を経営している。ミッションは「異彩を、放て。」。様々な知的障…

【書評】『幸福優位7つの法則』 ショーン・エイカー

幸福になるにはどうすればいいか、最新の理論をまとめた一冊。 筆者はポジティブ心理学の第一人者である。鬱や心の病などを研究する「ネガティブ心理学」ではなく、どうすれば幸福になれるかを考えるのが「ポジティブ心理学」である。筆者の研究から見えてき…

【書評】『最高の脳で働く方法』 デイビッド・ロック

脳に関する最新の発見から、仕事のパフォーマンスを変えていく一冊。 筆者は「ニューロリーダーシップ」を提唱し、脳科学研究を用いて個人や組織のパフォーマンス向上を図っている。そんな筆者の研究から生まれた、脳を活かす方法。ToDoリストをつくるだけで…

【書評】『火器の誕生とヨーロッパの戦争』 バート・S・ホール

火器がどのように決定的な兵器となっていったか、技術面から戦争の進化論。 14世紀に火器は発明されたが、当初は補助的な兵器であった。だが様々な技術の進歩と、戦術の進化により、戦場の主役となっていく。主に15~16世紀のヨーロッパを中心とした、戦争と…

【書評】『鎌倉幕府と室町幕府』 山田徹、谷口雄太、木下竜馬 

鎌倉幕府と室町幕府、今様々な新発見が相次ぐこの時代の、最新研究をまとめた一冊。 鎌倉時代と室町時代は、地味で人気の薄い時代である。いや、「であった」と言ったほうが正確である。なぜならこれらの時代は、歴史研究者の間で最もホットな時代であるから…

【書評】『愛をばらまけ』 上村 真也

大阪のあいりん地区、そこで奮闘する型破りの牧師と、その信徒たちを追ったノンフィクション。 大阪の釜ヶ崎は別の名をあいりん地区。日雇い労働者の街であり、スラム街の代名詞であり、警察署が襲われる暴動事件が何度となく発生してきた街である。そこにほ…

【書評】『超圧縮地球生物全史』 ヘンリー・ジー

この地球に生命が生まれてからの、38億年の長い長い物語。 地球は46億年前に誕生し、その8億年後に生命が誕生した。その長い歴史の中で、数多くの生命が生まれ、繫栄し、絶滅し、そしてまた新たな生命が生まれてきた。そんな生命のこれまでと、そして未来の…

【書評】『計算する生命』 森田 真生

「計算によって、人は新たな概念の形成へと導かれてきた」。そう語る筆者による、生命と数学との関係。 筆者は独立研究者として、数学を中心に研究や執筆活動を行っている。複素平面の本質的な意味、リーマンが関数に与えた大きな役割、高校数学が18世紀以前…

【書評】『暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病 』 ウォルター シャイデル

「大量動員戦争、革命、国家の破綻、伝染病の大流行の4つが、不平等を是正してきた」。そう語る筆者による、不平等の人類史。 農耕の発明とともに、人類は経済的不平等とともにあった。放っておけば不平等は拡大する。だが様々なタイミングで、そういった不…

【書評】『シリコンバレー式超ライフハック』 デイヴ・アスプリー

優れたパフォーマンスを発揮するにはどうすればいいか。そんな筆者の疑問から始まった、ライフハック大全。 冒頭の問いは、誰もが一度は抱く疑問である。筆者は世界中の一流専門家の話を聞き、19年の時間と数百万ドルの費用をかけ、最も速く「完全無欠」にな…

【書評】『売上を、減らそう。』 中村朱美

常識を覆す働き方で注目される佰食屋、その経営者が語る働くことの本質。 佰食屋は、京都にあるステーキ丼専門店である。営業はランチのみ、メニューは3種類のみ、1日100食限定、飲食店なのに残業ゼロ、なのに百貨店並みの給料。考えれば考えるほど、不思議…

【書評】『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』 鈴木 忠平

これは、北の大地にボールパークを作るという、壮大な夢を叶えた男たちの物語である。 北海道日本ハムファイターズは、地元に愛される球団である。2004年に本拠地を札幌ドームに移転して以来、着実に観客動員数を増やし、またチームも強くなっていった。球界…

【書評】『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 ジェームズ・C・スコット

「 定住と農業から、国家が生まれるまでは4000年以上もタイムラグがある」。そう語る筆者による、国家誕生までの人類史。 狩猟採集民であったホモサピエンスは、定住し、農業を始め、文明が生まれ、国家が誕生した。4000年の長期間にわたりながら、あまり語…

【書評】『書く仕事がしたい』 佐藤 友美

" data-en-clipboard="true">「物書きとして生きることは、目をこらし、耳をすませ、取材者として生きる態度を持つこと」。そう語る筆者による、物書きとして生きるためのノウハウ。 " data-en-clipboard="true"> 筆者自身が冒頭で述べているように、この本…

【書評】『友情を哲学する』 戸谷洋志

「友情とは、契約に基づかず、誰からも管理されず、常に解消可能な関係。本質的に不安定である」。そう語る筆者による、様々な哲学者の友情観の解説書。 古来より、友情は哲学の主要テーマの一つであった。アリストテレス、カント、ニーチェらの哲学の巨人た…

【書評】『香川にモスクができるまで』 岡内大三

香川にモスクをつくる。あるムスリムコミュニティとそのリーダーの奔走を追ったノンフィクション。 ノンフィクションライターである筆者は、ひょんなことからあるインドネシア人と知り合う。彼は溶接工として働きながら、日本人の妻と3人の娘を養い、在日ム…

【書評】『ひらめかない人のためのイノベーションの技法』 篠原 信

" data-en-clipboard="true">「不器用、発想が乏しいと言われても、絶望する必要はない」。そう語る筆者による、凡才のためのイノベーションの技法。 " data-en-clipboard="true"> 筆者は農業研究者として、それまで不可能とされてきた様々な技術を開発して…

【書評】『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』 ジェフ・ベゾス

" data-en-clipboard="true">「アマゾンでは、毎日がはじまりの日です」。そう語る筆者による、アマゾン成功の哲学。 " data-en-clipboard="true"> 今や我々の生活に欠かせないインフラとなった、アマゾン。その創業者であるジェフ・ベゾスが語る、Day1哲学…

【書評】『それでもあなたを「赦す」と言う』 ジェニファー・ベリー・ホーズ

ヘイトクライムにより引き起こされた事件と、残された遺族の悲しみについて。そしてそれでも、赦すということについて。 2015年6月17日、米国サウスカロライナ州のエマニュエル教会で発生した、銃乱射事件。州上院議員を含む9名が亡くなり、当時のオバマ大統…

【書評】『ミステリーの書き方』

ミステリー小説の書き方について、当代一流の作家たちがその手法を公開する一冊。 ミステリー作家は、どのように作品を生み出しているのか。東野圭吾曰く、一言で言えば「苦労して」作品を生み出している。なぜならば、一つのミステリー作品を生み出すために…

【書評】『「あ」は「い」より大きい』 川原繁人

名は体を表すという言葉がある。それと同時に、名前から受ける印象も大きい。だが、そういった印象はどのように決まるのか。そんな疑問を学問に昇華した、音声学の研究者による入門書。 「男性っぽい名前」や「女性っぽい名前」はどのように決まるのか。日本…

【書評】『嫌われた監督』 鈴木 忠平

中日ドラゴンズの落合博満監督、多くの関係者の証言を基に、その素顔に迫る一冊。 落合博満は8年間にわたり中日ドラゴンズの指揮を執り、全ての年でAクラス、リーグ優勝4回、日本一1回の実績を残した。まごうことなき名将であり、彼のもとで中日ドラゴンズは…

【書評】『人体大全』 ビル・ブライソン

人体。この最も身近でありながら、いまだに多くの謎を秘めた存在の秘密についての一冊。 人体を構成する元素は59種類であり、その材料費は5セントとも、168ドルとも、15万ドルとも言われている。もちろんそれらの材料を揃えただけで、人体をつくれるわけでは…

【書評】『少子社会日本』 山田昌弘

「子どもは「希望」の象徴である」。そう語る筆者による、少子化への処方箋。 筆者は「パラサイト・シングル」や「婚活」という言葉の名付け親としても知られ、少子化問題や家族問題の第一人者として、様々な研究や提言を行っている。そんな筆者が主張する、…