2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】『90秒にかけた男』 髙田昭

「一所懸命、瞬間を生きていると、うまくいかなくても「失敗」と感じなくなる」。そう語る筆者による仕事論。 筆者は長崎の一介のカメラ屋を、わずか10年ほどでTV通販の雄に育て上げた、立志伝中の人物である。そんな筆者の経歴からは想像もつかないほど、穏…

【書評】『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』 エフライム・ハレヴィ

「どちらが裏の世界で、どちらが日の当たる表の世界なのか。ほんとうのところ、自分でもよくわからない」。世界最強と言われる、イスラエル秘密情報機関の長官を務めた筆者による回顧録。 イスラエルは四方を敵に囲まれ、国土が小さいことから戦略的な縦深性…

【書評】『リスクと生きる、死者と生きる』 石戸諭

「生き残った人は、どう語り継いでいくかという問いの過程を、生きている」。東日本大震災、原発事故の取材手記。 筆者は震災直後から三陸沿岸の取材に関わり、原発事故の取材の一環でチェルノブイリも訪れている。筆者も語るように、複雑な感情を、例えば「…

【書評】『「働き方」の教科書』 出口治明

当代屈指の教養人である筆者による、仕事と人生の楽しみ方の指南書。 日本人の年間労働時間は、多く見積もっても2000時間。1年間は8760時間だから、仕事はその23%に過ぎない。だからこそ失敗を恐れず、楽しんで仕事をすべきである。驚異的な読書量と、幅広い…

【書評】『菊と刀』 ルース・ベネディクト

戦時中の日本人研究から生まれた、日本人論の金字塔。 筆者は米国で生まれ育ち、日本を訪れたことがない。また筆者が取材した先はほとんどが日系二世であり、ごく間接的にしか日本に触れたことがない人物である。そのためか、基本的なところでの誤謬が散見さ…

【書評】『ヒルビリー・エレジー』 J・D・ヴァンス

「人々は、富める者と貧しき者、教育を受けた者と受けていない者、上流階層と労働者階層というように、大きく二つのグループに分けられ、ますます違う世界を生きるようになっている」。そう語る筆者による、ラスト・ベルトの真実。 筆者はラスト・ベルト(さ…

【書評】 『フンボルトの冒険』 アンドレア・ウルフ

「フンボルトと数日ともに過ごすのは、数年生きるのと変わらない」そうゲーテに評された男、アレクサンダー・フォン・フンボルト。今日の我々の自然観を創った人物の伝記。 フンボルトがいなければ、大陸移動説も、進化論も、『沈黙の春』も、生態系理論も、…

【書評】『魔女の1ダース』 米原万里

「同じ物事や現象に対してさえ、異なる歴史を歩んだ社会集団によって、捉え方や意味付けが180度変わってしまう」。通訳として様々な文化の懸け橋となってきた筆者。そんな筆者が語る、自分の常識に囚われない生き方について。 1ダースは12個。これは我々の世…

【書評】『あなたの脳のはなし』 デイヴィッド・イーグルマン

脳科学の世界的権威が語る、脳と我々の意識の関係について。 われわれ人間は、生まれたときは無力である。歩けるようになるまで1年、考え方を表明できるようになるまでさらに2年、自力で生きていけるようになるまでさらに何年もかかる。野生動物はそうはいか…

【書評】『あなたの人生の意味』 デイヴィッド・ブルックス

「人間の美徳には、履歴書向きの美徳と、追悼文向きの美徳の2種類ある」。そう語る筆者による、より良き人になるための指南書。 人は誰しもが、自分がかわいく、自分のことを優先して考えたがる。だがそこから一歩進んで、自分の幸福のためではなく、聖なる…

【書評】『「決め方」の経済学』 坂井豊貴

「多数決を使うことは、子どものころいつの間にか教わる。けれどその正しい使い方は、大人になっても教わることはない」。そう語る筆者による、みんなの意見のまとめ方に関する考察。 選挙で勝利した政党は「民意を得た」という表現を使う。だがこれは本当だ…

【書評】『アメリカは忘れない』 エミリー・S・ローゼンバーグ

「よく知られた「歴史」の一部となるには、人の心を引きつけ、何らかのメディアを介して操作された形態で記憶されなければならない」。そう語る筆者による、「パールハーバー」が米国のアイコンとなるまでの歴史。 ローズヴェルトが対日参戦の根拠としたのは…