2021-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『マンガの創り方』 山本おさむ

現役のマンガ家であるある筆者が、徹底的にロジカルに語るマンガの創り方。 いくら絵が上手くても、いくらストーリーのアイディアが優れていても、いかにシナリオに秀でていても、一流の漫画家にはなれない。なぜなら、マンガとは発想、プロっと、ストーリー…

【書評】『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』 Dain

運命の本に出合うにはどうすればいいか。日本屈指の書評ブロガーによる、本の見つけ方、読み方の指南書。 人は誰しも、運命の一冊となるような本を読んでいる。そんなスゴ本に、どうやって出会うのか。あらゆる本はすでに読まれているのだから、それを読んだ…

【書評】『The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ) なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか』 デビッド・ロブソン

なぜ優秀な人々が愚かな行動をとるのか。筆者の疑問から生じた、知能の落とし穴と、実りある学習法、そして知性ある組織の作り方について。 クレジットカードの限界額まで使ったことのある人は、IQ100で8.3%なのに対し、IQ140では14%にも上る。しかも破産や…

【書評】『太平洋島嶼戦 第二次大戦、日米の死闘と水陸両用作戦』 瀬戸利春

「大洋を主戦場とする戦争は、太平洋戦争が史上初で唯一のもの」。そう語る筆者による、日米の水陸両用作戦の記録。 広い太平洋を舞台に戦われた太平洋戦争。そこでは基本的に島々を巡る戦いであり、陸海空の戦力の統合的な活用が勝利のカギとなる戦いであっ…

【書評】『アフターデジタル2 UXと自由』 藤井保文

デジタルが浸透した「アフターデジタル」の世界で、ビジネスはどう変わるのか。先進地域である中国の事例を中心に、その未来図を探る一冊。 DXという言葉を聞かない日がないくらい、デジタル化は世の趨勢である。だがそれが何を指しているのか、その本質は何…

【書評】『コシヒカリ物語―日本一うまい米の誕生』  酒井義昭

美味いコメの代名詞ともいえる、コシヒカリ。その誕生から現在に至るまでの歩みを追った意欲作。 「コメ品種の寿命は10年」と言われている。そんな中、コシヒカリは1956年の誕生から23年後の1979年に作付率1位になり、現在でも2位にトリプルスコア以上の差を…

【書評】『資本主義の終焉と歴史の危機』 水野 和夫

「ゼロ金利は、一定期間資本を投下してそれ以上に利潤を得るという資本主義のシステムが限界に達した証拠」。そう語る筆者による、資本主義の行く末。 資本主義は16世紀にはじまり、フロンティアの開拓を通じて発展してきた。だが現在は、地球上のどこにもフ…

【書評】『エマニュエル・トッドの思考地図』

ソ連崩壊やリーマンショック、ブレクジットなどを予言した、エマニュエル・トッド。日本語オリジナルで語る、真の思考とは。 エマニュエル・トッドは歴史人類学者として、データと歴史に基づき、思考と研究を進めてきた。そんな彼が明かす、思考の見取り図。…

【書評】『言ってはいけない』 橘 玲

「ひとは幸福になるために生きているけど、幸福になるようにデザインされているわけではない」。そう語る筆者による、科学の知見から得られた、不愉快な真実。 世の中にはタブーがあり、「それを言っちゃあおしまいよ」という事柄に溢れている。偏見を廃し、…

【書評】『Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』 ベン・ホロウィッツ

「人の真の姿は、どんな行動をしているかに表れる」。そう語る筆者による、企業文化の作り方。 筆者はベンチャーキャピタルの創業者として、様々な企業とその文化を見てきた。そんな筆者が数々の企業から、歴史上の偉人から、武士道や孫子の兵法から学んだ、…

【書評】『日本の半導体四〇年』 菊地誠

戦後まもなくから、一貫して半導体の基礎研究を行ってきた筆者が語る、日本の半導体が世界を席巻するまでの記録。 筆者ははじめは通産省の研究所で、後にソニー中央研究所で、40年にわたり半導体の基礎研究を行ってきた、日本のエレクトロニクスの生き字引と…

【書評】『緊急招集(スタット・コール)―地下鉄サリン、救急医は見た』 奥村 徹

「教訓は普遍化することによってのみ、教訓たりえる」。緊急医として地下鉄サリン事件の最前線にあった筆者が語る、医療現場の記録。 筆者は地下鉄サリン事件当時、聖路加国際病院で緊急医として勤務していた。首都中枢が毒ガステロを受け、数千名の死傷者を…

【書評】『経営者になるためのノート』 柳井正

「本当に成長を考えて、準備をしている人にしか未来はやってこない」。そう語る筆者による、経営者の為すべきこと。 筆者はファーストリテイリングの経営者として、知らぬ者がいない人物である。フリース、ヒートテックといった革新的製品だけではなく、郊外…

【書評】『指導者とは』 リチャード・ニクソン

「指導者を偉大ならしめるのに必須の条件は、偉大な人物、偉大な国家、そして偉大な機会である」。そう語る筆者による、指導者論。 筆者は個人として、政治家として、米国大統領として、戦後の様々な指導者と交流を持ってきた。自身も超大国の指導者でもあっ…

【書評】『あれかこれか:「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』 野口真人

「現金は、最も価値の低い資産である」。そう語る筆者による、ファイナンス理論入門。 筆者は 企業価値評価の専門家として、ファイナンスを生業にしている人物である。そんな筆者が語る、価値判断の基準としての「使える」ファイナンスの考え方とは。銀座の…

【書評】『経営センスの論理』 楠木 建

「スキルをいくら磨いても「担当者」にしかなれず。経営のためにはセンスが必要」。そう語る筆者による、経営センスの磨き方。 筆者は競争戦略とイノベーションを専門とする研究者であり、古今の様々な事例を研究してきた。その筆者が見つけた、経営に必要な…

【書評】『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』 cis

「割安だという判断は主観に過ぎない。株価こそが答えであり、世の中の総意である」。そう語る筆者による投資論。 筆者はデイトレーダーとして、200億円以上の資産を築いた人物であり、タイトル通り一人の力で日経平均を動かせる男である。浮き沈みの激しい…

【書評】『東條英機ー「独裁者」を演じた男』 一ノ瀬俊也

「「人情宰相」の演技ができた東條以外に、日本の総力戦指導者はありえなかった」。そう語る筆者による、総力戦指導者としての東條英機の実像。 「生きて虜囚の辱めを受けるなかれ」「敵機は気合で墜とす」など精神論ばかりがクローズアップされ、また太平洋…

【書評】『もっと言ってはいけない』 橘 玲

遺伝子から見た、日本人の特徴とそれが活きる世界について。著作家である筆者が語る、この世界の残酷な真実。 この世は残酷で不愉快な真実に満ちている。そんな世界を、遺伝子から解き明かした一冊。精神疾患の遺伝確率、ゲイの遺伝子が存在する合理的理由、…

【書評】『「役に立たない」科学が役に立つ』 エイブラハム・フレクスナー、ロベルト・ダイラクラーフ

「科学はミシシッピ川のように、遠い森の中の小さな流れから始まり、無数の源流が集まって、力強い川が形成される」。そう語る筆者による、基礎科学の重要性について。 筆者は米国のプリンストン高等科学研究所の所長を務め、また公共政策への提言も幅広く行…

【書評】 『シュリーマン 黄金と偽りのトロイ』 デイヴィッド・トレイル

「シュリーマンの膨大な手紙や日記の中で、彼が発掘開始以前にトロイに関心を持っていたことを示す記述は存在しない」。そう語る筆者による、シュリーマンの評伝。 ハインリヒ・シュリーマンは伝説的な人物である。幼い日にトロイの神話に憧れ、長じてもその…

【書評】『南北戦争』 小川寛大

米国史の分水嶺となった、南北戦争。今なお米国に影響を与え続けるこの戦いの解説書。 日本で「戦前」「戦後」といえば、太平洋戦争の前か後かを示す。だが米国においては、それは南北戦争の前か後かを示す。米国が経験した唯一の内戦であり、当時の人口の10…

【書評】『アメリカ空軍史から見たF-22への道』 夕撃旅団

史上最強の戦闘機、F-22。そこに至るまでの米空軍の長い道のりを追ったノンフィクション。 上下巻に及ぶこの長い長い物語は、2人の知られざる天才を中心に展開する。1人は戦略爆撃を近代的な理論にまとめ上げた、ハロルド・ジョージ。米空軍は元々戦略空軍と…

【書評】『政談』 荻生 徂来

「国を治めるというのは、碁盤に縦横の筋を付けるように、全体を見渡した計画に基づいて物事を進めていくこと」。そう語る筆者による、経世の書。 筆者は江戸中期、徳川吉宗のブレーンとして活躍した人物である。開闢以来第一の人物と同時代人に激賞された大…

【書評】『クリーンミート 培養肉が世界を変える』 ポール・シャピロ

肉の細胞を増殖して、食肉(クリーンミート)をつくる。ベジタリアンでもある筆者が、現実に近づきつつあるこの技術を追ったノンフィクション。 世界中には様々な動物が暮らしている。だがその内訳は、我々が思っているよりもはるかに偏っている。世界にはライ…

【書評】『人生の短さについて』 キケロ

「我々は、短い人生を授かったのではない。我々が、人生を短くしているのだ」。そう語る筆者による、人生の処方箋。 筆者は2000年前の古代ローマ帝国で、政治家として、哲学者として、教育者として、著作家として活躍した人物である。そんな筆者が語る、より…

【書評】『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』 大木毅

大日本帝国の軍人たちは、どのような言葉を残したのか。史料に当たるだけではなく、彼らの生の声を聴いた筆者らによる、大日本帝国陸海軍の真実。 太平洋戦争は今に続く様々な教訓を残した。その証言者たちはいかに語り、記録者たちはいかにそれを後世に残そ…

【書評】『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』 田中信彦

中国ビジネスに長く関わってきた筆者による、中国人の思考様式について。 日本と中国とは、長い歴史に裏打ちされた共通項も多いが、それ以上に異なる価値観が多い、近くて遠い隣人である。30年近くにわたり中国での人事マネジメントに携わり、ユニクロやリク…

【書評】『美味しい進化 食べ物と人類はどう進化してきたか』 ジョナサン・シルバータウン

進化生態学を研究する筆者による、ヒトと食べ物の進化の歴史について。 料理は文化の大きな要素を占め、食事は生きていくうえで必要であるだけでなく大きな楽しみでもある。ヒトが、食べ物が、今の形になるまでにどのような進化を遂げてきたのか。苦みが警戒…

【書評】『灰緑色の戦史 ドイツ国防軍の興亡』 大木毅

近代ドイツ軍事史の第一人者が語る、第一次大戦開戦前から第二次大戦での滅亡までの、ドイツ国防軍の歴史。 ドイツ国防軍は、様々な「神話」に彩られた軍隊である。第一次大戦の必勝計画であるシュリーフェン計画から、電撃戦の衝撃、戦争犯罪に関わらない清…