2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【書評】『トランス・サイエンスの時代』 小林博司

「現代は科学と政治の領域が次第に交錯していくトランス・サイエンス状態にある」。そう語る筆者による、科学技術と社会の関係について。 かつて科学は、誰が見ても間違いのない客観的真理を政治権力へと供給するという立場であった。だが近年においては、「…

【書評】『セイラー教授の行動経済学入門』 リチャード・セイラー

心理学と経済学を融合させた、行動経済学。その泰斗による入門書。 伝統的な経済学は、誰もが「最も合理的な行動」を取ることを前提としている。だが誰もが身に覚えがあるように、人は体に悪いとわかっていながら煙草を止められなかったり、期待値が低いと知…

【書評】『海民と日本社会』 網野善彦

陸の農業からの視点でしか語られてこなかった日本史に、海民という新たな視点を加えた筆者。その講演録。 「百姓」は農民のことではない。今までの歴史認識を覆す「網野史観」を確立した筆者。江戸時代の能登の「百姓」の研究から、「百の姓」としての、商業…

【書評】『経営戦略の論理』 伊丹 敬之

「経営の本質とは、「いまだあらざる姿」を求めるところにある」。経営学の重鎮による、人間心理にまで踏み込んだ経営戦略。 戦略に目標を入れない理由、情報的資源の特性、事業の絞り込みが必要な心理的理由、顧客の種類、競争の武器の変遷、事業の相乗効果…

【書評】『人生論』 トルストイ

「この世界こそが本当の生命なのであり、残り続け、永遠に生き続けていく」。ロシアが誇る文豪が著した、永遠の問いに対する答え。 考えるとはどういうことか、自己とはどのような存在か、真の生命とは何か、他者のために生きるとはどういうことか、快楽の副…

【書評】『神話の力』 ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ

神話学の泰斗であるジョーゼフ・キャンベルと、ジャーナリストのビル・モイヤーズの対談集。 世界中の民族が、各々の神話を持つ。その神話体系には共通の主題も多く、人類社会の一つの基盤ともなっている。宗教とは、神とは、儀式とは、英雄とは、理性とは、…