2018-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』 ガルリ・カスパロフ

「機械にあるのは指示だが、私たちには目標がある。壮大な夢をかなえるためにこそ、知能機械が必要なのだ」。史上最強と謳われたチェスプレイヤーであり、かつて「ディープ・ブルー」との対戦で世界的な注目を集めた筆者による、人工知能論。 かつて機械は、…

【書評】『修養』 新渡戸稲造

「些細なことでも実行を積んでいけば、その中に含まれる原則がおのずから会得される」。当代一流の教育者であり、教養人であり、国際人であった筆者による、人としての道徳の教科書。 平凡と非凡の差とは、死を恐るべき理由とは、人物の価値を測る方法とは、…

【書評】『<効果的な利他主義>宣言!──慈善活動への科学的アプローチ』 ウィリアム・マッカスキル

「必ずしも善意が成功に結び付くとは限らない。では、どうすればなるべく効果的に人々の役に立てるだろうか」。そんな疑問から生まれた、慈善活動への科学的アプローチ。 日本においても、寄付や慈善活動は当たり前になり、「どの団体に寄付をすべきか」とか…

【書評】『勉強の哲学 来たるべきバカのために』 千葉雅也

「勉強は変身で、変身はいつでも始められるし、いつ中断してもいい」。そう語る筆者による、「勉強」を哲学した一冊。 勉強とは自己破壊であり、何かの専門分野のノリに引っ越すこと。その過程で昔の自分がいなくなるという試練を通過する。だがその試練を乗…

【書評】『イノベーション・オブ・ライフ』 クレイトン・M・クリステンセン

「あなたが人生を評価するものさしは、何だろう?」。世界屈指の経営学者である筆者による、経営学を人生に活かす指南書。 どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるのか。どうすれば伴侶や家族、親しい友人たちとの関係を、ゆるぎのない幸せのよりどころに…

【書評】『ゲッベルスと私』 ブルンヒルデ・ポムゼル

これは、あの狂気の時代を生きた、ある女性の独白である。 本書の語り手、ブルンヒルデ・ポムゼルはドイツのごく普通の家庭に生まれ育った。我々と違うことといえば、彼女がナチス宣伝相のゲッペルスの秘書官であったこと。それまで何ものでもなかったヒトラ…

【書評】『歴史の「普通」ってなんですか?』 パオロ・マッツァリーノ

「歴史的に見れば、伝統とはちょっと長めの流行にすぎず、伝統は永遠でも不変でもない」。そう語る筆者による、日本の「伝統」を検証するシリーズの教育・保育編。 保育園建設反対運動も、待機児童も、電車内での化粧も、夏祭りに興味のない子どもも、今に始…

【書評】『超入門 資本論 』 木暮 太一

経済学史上、最も影響力のある著作と言っても過言ではない『資本論』。経済入門書作家である筆者が解説する、資本論のエッセンス。 資本論は、「価値」と「使用価値」、「剰余価値」、「剰余価値」が減っていくこと、の3つをエッセンスとしている。我々の給…

【書評】『ギリシア人の物語Ⅲ』 塩野七生

「大航海時代までの1500年以上にわたって、欧州人は東ではアレクサンドロスが、西ではカエサルが踏んだ地点に挟まれた世界を、世界と思いながら生きてきた」。700年にわたるギリシア人の物語、完結編。 国家を機能させるには、大手企業が振るわなくなる理由…

【書評】『社会心理学講義』 小坂井敏晶

「人間を理解するには、どのような角度からアプローチすればよいのだろうか」。筆者のそんな疑問から生まれた深遠な一冊。 社会心理学とは、「人間とは何か」という問いに答えることを命題とし、社会学、心理学、哲学の学際に存在する分野である。批判的な読…

【書評】『CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる』 J・C・カールソン

「CIAのインテリジェンス・スキルが、一部の天才にしかできない高度な職人芸でないからこそ、一般のビジネスパーソンには参考になる」。そう語る筆者による、情報を引き出し、危機に対処するためのテクニック集。 相手に「会いたい」と思わせるために必要な…

【書評】『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』 城戸 久枝

「父は、私の父になるまでに、どんな道を歩んできたんだろうか」。日本生まれの中国残留孤児二世である筆者による、自分につながる歴史をめぐるノンフィクション。 筆者の父は、中国残留孤児だった。三人称で語られる第一部では、満州国軍人であった祖父の話…

【書評】『若い読者のための経済学史』 ナイアル・キシテイニー

「経済学とは、社会が資源(リソース)をいかに使うかを研究する学問」。そう語る筆者による、経済学がいかに世界を解き明かしてきたかの歴史書。 アダム・スミスに始まり、マルサス、ケインズなどのそうそうたる経済学の大家の理論から、中央計画経済が破綻し…

【書評】『日本の15歳はなぜ学力が高いのか?』 ルーシー・クレハン

3年に1回実施される国際学力テスト、PISA。そこで高得点を挙げる国々は、どのような教育を行っているのだろうか。教師でもある筆者による、そんな疑問から生まれた教育論。 フィンランド、日本、シンガポール、中国、カナダ。文化も、風習も、国民性も、政治…

【書評】『限りなく完璧に近い人々』 マイケル・ブース

様々な幸福度調査で、常に上位に位置する北欧諸国。トラベルジャーナリストである筆者が、その社会について解説した一冊。 世界一住みやすい国と言われるデンマーク、世界最高の教育システムを持つフィンランド、世界で最も成功した産業国家であるスウェーデ…

【書評】『人はなぜ「美しい」がわかるのか』 橋本 治

『「美しさ」とは各人がそれぞれに創り上げるべきもので、「美しさ」とは無数にあるもの』。そう語る筆者による、「美しさ」をめぐる哲学。 「美しい」とはどういう状態なのか。それは合理的な状態だと筆者は述べる。美しさが分からないとはどういう状態か、…

【書評】『大英帝国の歴史 下』 ニーアル・ファーガソン

かつて地球上の面積の1/4 を占める大帝国であった英国の歴史。下巻はヴィクトリア朝の絶頂期から没落、そして現在まで。 2度の世界大戦により、英国はその輝きを失ったと言われる。だが没落の兆候は、それ以前の18世紀にもあったのだ。ドイツの統一とその急…

【書評】『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』 畠山理仁 

「無名の新人候補の訴えにも見るべきものがあるし、未来へのヒントがあふれている」。そう語る筆者による、2016年の東京都知事選をに立候補した、いわゆる「泡沫候補」たちのノンフィクション。 97%対3%。これは、上記の選挙において民放テレビによる「主要3…

【書評】『大英帝国の歴史 上』 ニーアル・ファーガソン

「それが良いものであろうが悪いものであろうが、正しいものであろうが汚いものであろうが、今日我々が世界として認識しているものは、その大部分がイギリス帝国の時代の産物である」。そう語る筆者による、大英帝国の歴史。上巻は大帝国への道を歩み始めた…

【書評】『テクニウム』 ケヴィン・ケリー

「必要条件となる知識や道具が整ったときに、発見は事実上必然となる」。そう語る筆者による、テクノロジーの本質とは。 グローバルで大規模に、相互に結ばれているテクノロジーのシステム。それを筆者はテクニウムと名付けた。我々人類は石器から蒸気機関、…

【書評】『チャヴ 弱者を敵視する社会』 オーウェン・ジョーンズ

「本書の狙いは、労働者階級の敵視の実態を明らかにすること」。そう語る筆者が綴る、弱者がさらに叩かれる世界の現実。 生活保護、移民、障碍者、ホームレスなど、現在の社会は弱者に同情と支援をもたらすのではなく、蔑視と排除とをもたらしている。これは…

【書評】『経済大陸アフリカ』 平野克己

アフリカと聞いて、どのようなイメージが浮かぶだろうか。貧困、飢餓、紛争、腐敗、独裁、などネガティブなイメージばかりが先行するアフリカ。そんなアフリカを経済面から切り取った一冊。 進境著しい中国企業のアフリカでの存在感はいかほどか、これまでア…

【書評】『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』  高橋 団吉

「船のようにたくさんの人を乗せて、空を飛ぶように地上を走る乗りものは、まだこの地球上で、だれも見たことがなかったのである」。世界に類を見ない超特急、新幹線をつくりあげた男の記録。 これは百戦百敗した明治男の物語である。収賄容疑で投獄され、職…

【書評】『お嬢さん放浪記』 犬養 道子

戦後まもなく欧米に留学した筆者の、痛快無比な放浪記。 1948年秋、いまだ戦災の余燼くすぶる日本から、一人の女性がボストンへと旅だった。入院先で学費を荒稼ぎしたり、オランダ領事に頼み込んで無理やりヨーロッパにも留学したり、シカゴのスラム街に迷い…

【書評】『あの会社はこうして潰れた』 藤森徹

国内最大の企業情報データベースを保有する、帝国データバンク。そこで倒産を扱う情報部で、長年にわたり企業取材を続けてきた筆者による、企業の倒産の真実とは。 構造変化に巻き込まれた企業、老舗の「のれん」が裏目に出るとき、粉飾で姿を消した企業、同…

【書評】『「学力」の経済学』 中室 牧子

「経済学がデータを用いて明らかにする教育や子育てに関する発見は、専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある」。教育経済学者の筆者による、事実ベースの教育論。 試験前に学生の祖母が亡くなるのはなぜか、ご褒美の効果的なあげ方とは、褒めると…

【書評】『人が育つ会社をつくる』 高橋俊介

人が組織の中で成長するためには、何をすればいいか。経営コンサルタントとして多くの企業を見てきた筆者による、キャリア創造論。 人が成長するためには、何が必要か。人の成長のために、組織はどうあるべきか。様々な成長パターンを事例から分析し、組織の…

【書評】『国家はなぜ衰退するのか(下)』 ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン

国家はなぜ衰退するのか。下巻は17世紀の植民地主義から産業革命、そして現代まで。 なぜこんにちの国家間にはこんなにも不平等が存在しているのか。その起源は19世紀にある。工業化と技術改革を行った国の多くは、現在の先進国になった。ではそれを逃した国…

【書評】『9プリンシプルズ』 伊藤穣一、ジェフ・ハウ

「これまでの常識が通用しなくなった、新しい時代に通用する理念、哲学、行動原理とはどんなものか?」ベンチャーキャピタリストとして世界の最新テクノロジーに投資し、現在はMITメディアラボの所長を務める筆者による、未来を生きるための9原則。 我々の時…

【書評】 『日本鉄道事始め』  高橋 団吉

ニッポンに蒸気機関車が走った日、その歴史的意義を明らかにした一冊。 1872年9月12日、日本初の蒸気機関車が新橋を出発した。その列車に乗るのは、明治天皇、山尾庸三、大隈重信、西郷隆盛、板垣退助、井上薫、勝海舟、江藤新平、山縣有朋、黒田清隆、陸奥…