アフリカと聞いて、どのようなイメージが浮かぶだろうか。貧困、飢餓、紛争、腐敗、独裁、などネガティブなイメージばかりが先行するアフリカ。そんなアフリカを経済面から切り取った一冊。
【書評】『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』 高橋 団吉
「船のようにたくさんの人を乗せて、空を飛ぶように地上を走る乗りものは、まだこの地球上で、だれも見たことがなかったのである」。世界に類を見ない超特急、新幹線をつくりあげた男の記録。
これは百戦百敗した明治男の物語である。収賄容疑で投獄され、職を失い、事業に失敗し、戦乱にまみれ、数え切れぬほどの挫折を重ねてきた男。だがその人生の最後の最後で、一度だけ勝った。その勝利の置き土産が東海道新幹線であり、「鉄道ルネッサンス」とも言うべき世界的な高速鉄道建設の流れであった。1955年、この物語の主人公である十河信二71歳の時、彼が国鉄総裁に就任したとき、国鉄は散々たる有様であった。増え続ける鉄道需要、毎日のように起こる事故、老朽化した車両設備、激化する労働問題、旧態依然とした官僚組織、それに加えて政治の圧力もあり予算の手配もままならない。そんな八方ふさがりの中、十河は戦前にお蔵入りになった「夢の超特急」計画をぶち上げる。国鉄内の反対論が、政治家の横やりが、進まない用地買収が、ままならない予算が、その他数え切れないほどの障害が、十河の行く手を阻む。
今でこそ当たり前になった新幹線という風景を、まだ誰も見たことのなかった時代の物語。まるでコロンブスの卵のように、当時の人からすれば夢物語でしかなかった新幹線。愚直に、泥臭く、大仕事をやってのけた男の生涯は、刮目に値すると思う。おすす
【書評】『お嬢さん放浪記』 犬養 道子
戦後まもなく欧米に留学した筆者の、痛快無比な放浪記。
1948年秋、いまだ戦災の余燼くすぶる日本から、一人の女性がボストンへと旅だった。入院先で学費を荒稼ぎしたり、オランダ領事に頼み込んで無理やりヨーロッパにも留学したり、シカゴのスラム街に迷い込んだり、ドイツで講演料を稼いだり、しまいにはフランスの古城をリノベーションしてインターナショナルハウスを作ったり。あふれる行動力と、涌くがごときアイディアと、何より周囲の驚くべき協力とで駆け抜けた青春記。わくわくとページを繰る手が止まらない、筆者の危なっかしさに引き込まれる一冊。おすすめ
【書評】『「学力」の経済学』 中室 牧子
「経済学がデータを用いて明らかにする教育や子育てに関する発見は、専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある」。教育経済学者の筆者による、事実ベースの教育論。
試験前に学生の祖母が亡くなるのはなぜか、ご褒美の効果的なあげ方とは、褒めるときはどこを褒めるべきか、ゲームをやめさせれば勉強時間は増えるのか、教育投資の収益率はいくつか、少人数学級は効果があるのか、教員免許は教師の質を保証するのか、などなど。印象論でもなければ、感情論でもない。データを分析して得られる教育論は、読み物としても一級品である。いちおし