【書評】『ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊』 塩野七生

ギリシア人の物語、第Ⅱ巻は民主政の黄金期であるペリクレス時代から、衆愚政に陥りギリシアが衰退するまで。
 
ペリクレス時代と、その後の衆愚政。あまりに対照的なその2つの時代の比較を通じ、民主政とは何か、衆愚政とは何かを問う一冊。ギリシアのポリス群、アテネ、スパルタ、テーベなどの興亡も興味深いが、その悠久の歴史すらも下敷きに感じさせてしまうくらい、塩野節が冴えわたる。戦争を長期化させないためには、政治的才能と軍事的才能の違いとは、現実主義者が陥りがちな過ちとは、怒りが起こるメカニズムとは、民主政のリーダーと衆愚政のリーダーの違いとは、戦場で兵士たちに向けるべき言葉とは、などなど。広い教養と、深い考察によって導き出された言葉の数々は、「歴史は思想である」ということを再確認させてくれる。いちおし