【書評】『行こう、どこにもなかった方法で』 寺尾玄

どんな試みも、それが不可能であることを証明するのは、不可能なのだ」。扇風機や空気清浄機、トースターなど、今まで見慣れた製品を、革新的なものに変えてきたバルミューダ。その創業者の波乱万丈の半生記。
 
筆者は現在、家電メーカーの経営者である。だがその生涯の中で、家電やものづくりについて、あるいは経営について、常に素人であった。不良少年だった中学時代、両親のこと、高校を中退して向かった一人旅、ロックスターを目指していた日々、偶然に出会ったものづくり、会社の危機に起死回生として放った扇風機、などなど。波乱万丈でありながら、静かで控えめな語り口がそれと感じさせない。淡々としていながら、ぐいぐいと引き込まれる不思議な魅力の文章。おすすめ