【書評】『安部修仁 逆境の経営学』 戸田顕司

地獄を2度見た男が語る、経営の本質。
 
かつて吉野家は、1980年の倒産、2004年の牛丼販売停止という2度の地獄を見た。本書の主人公である安部修仁は、1980年には営業部長として、2004年には社長として危機への対応を指揮した。その経験から導き出された、実践経営論とは。危機下で経営者がやるべきこと、危機において最も危険な瞬間、相手の能力を引き出す秘訣、組織全体の士気を高める方法、社内向けのメッセージで述べるべきこと、リスクヘッジへの考え方、危機を危機としないためにすべきこと、などなど。まるで経営学者のように理論的で理知的な語り口と、現場たたき上げらしい地に足の着いた経験とが、この本を特別なものにしている。おすすめ