【書評】『オスマン帝国』 小笠原弘幸

オスマン帝国史の専門家による、最新の研究成果を踏まえたオスマン帝国の歴史。
 
「ヨーロッパの病人」と蔑まれた、欧州列強の草刈り場。かつてのオスマン帝国とは、そんなイメージで語られる存在だった。トルコ人にとっては退廃と衰退の黒歴史支配下にあった国々にとっては民族の自立を妨げられた暗黒時代。そんなネガティブな存在として語られ続けてきた。だが滅亡から100年を迎えようとした現在、トルコでも、かつてオスマン帝国支配下にあった国々でも、その歴史を再評価する動きが広がっている。かつてアジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸にまたがる国土を誇り、600年という一つの王朝としては異例の命脈を保ったオスマン帝国。最新の研究成果から見えてくる、オスマン帝国の真の姿とは。読書の楽しみとは、新しい知識を得ることだけではない。今まで得た知識がアップデートされることもまた、読書の楽しみだと再確認させてくれる一冊。おすすめ