【書評】『戦車将軍 グデーリアン』 大木毅

第二次世界大戦で連合国を驚愕させた、ドイツの電撃戦。その電撃戦の父とまで呼ばれる、グデーリアンの評伝。
 
急降下爆撃機で敵後方を撃滅し、戦車の打撃力で敵陣を粉砕し、機械化歩兵の機動力で制圧する。第二次世界大戦劈頭のドイツ軍の圧倒的な強さとともに、伝説的に語られる電撃戦。その生みの親でもあるハインツ・ヴィルヘルム・グデーリアンもまた、伝説に彩られた人物である。そんな伝説のベールをはがし、彼の実像に迫る一冊。彼が戦車に着目するようになったきっかけ、装甲軍団の初陣となったオーストリア進駐で見つかった課題、「電撃戦」という言葉、ヒトラーとの関係、セクショナリズムの弊害、ドイツ軍の強さの秘密、グデーリアンに欠けていたもの、などなど。最新の研究成果から見えてくる、「戦車将軍」の実像。歴史人物の評伝としてだけではなく、電撃戦という新思想をいかに組織の中で根付かせていくかという、組織論としても有用な一冊。おすすめ