【書評】『とんかつの誕生』 岡田哲

「日本人が海外でホームシックになった時、とんかつ、カレーライス、コロッケの三大洋食が食べたくなるという」。そう語る筆者による、明治維新以降の日本の洋食の発展史。
 
1872年、明治政府は天武天皇以来1200年にも及ぶ肉食禁止を解き、西洋との体格差を埋めるべく肉食を奨励し始めた。当初はこれに反対するテロリストが皇居に乱入するなど、様々な軋轢を経て、洋食は日本の新たな食文化として発展していく。明治初期に牛鍋やすき焼きが誕生した必然、肉食の普及に貢献したある制度、西洋料理と洋食との違い、パンが幕末に普及した理由、とんかつの誕生に至る長い道のり、初期のとんかつの正しい食べ方、などなど。牛鍋、アンパン、コロッケ、カレーライスといった洋食が生まれた背景。そしてその土壌のもとに洋食の王者、とんかつが誕生するまでの物語。我々が普段口にしている食事が、今の形になるまでの必然と偶然を追った一冊。読めばきっと、とんかつを食べたくなる。おすすめ