【書評】『虐殺のスイッチ』 森達也

「なぜ人は優しいままで人を大量に殺せるのか」。そんな筆者の疑問から始まった、集団による虐殺のメカニズムを解き明かす一冊。
 
筆者はたった一人でつくった「A」というドキュメンタリー映画で、オウム真理教の中で出家信者と暮らし、その模様を取材したことでも知られている、筆者から見たオウム信者は、世間で言われているのとは違い、一人一人は優しく礼儀正しい人々であった。ではなぜ彼らが、残虐なテロ組織となっていったのだろうか。為政者が過ちを犯すとき、オウムが優しいままで人を殺せたわけ、宗教弾圧をすべきでない理由、良識ある人が虐殺に手を染めるまでの8段階、カンボジアがキリングフィールドを観光客に公開している理由、などなど。我々の中にある、虐殺のスイッチ。そのメカニズムを探る一冊。おすすめ