【書評】『答えのない世界を生きる』 小坂井敏晶

「答えのない世界を生きる」。パリ第八大学で哲学を教える筆者による、この世界で異端であることの存在意義について。
 
これは、混沌とする社会に生きながらも、答えを探せというメッセージではない。革新的なアイディアは、常にその当時の「異端」から生まれてきた。万有引力の法則も、進化論も、地動説も、はじめは皆異端だった。ノーベル物理学賞の受賞者のうち、自国以外で研究成果を出したのは62%にも及ぶ。裏を返せば、ノーベル賞を取るような研究者の中で、「正統派」の研究者は32%しかいないということ。
 
一言で要約できるような、一言で感想を言えるような底の浅い本ではない。異端とは、矛盾とは、変革とは、平等とは、普遍的とは。そんな問いに対して筆者が語り、同時に同じ問いが読者に突き付けられる。「自分は」どうアプローチして、どのような答えを出すのか。哲学とは、本を読んで納得するのではなく、本を読んでから自らに問いかけることだと思う。いちおし