【書評】『ギリシア人の物語Ⅲ』 塩野七生

大航海時代までの1500年以上にわたって、欧州人は東ではアレクサンドロスが、西ではカエサルが踏んだ地点に挟まれた世界を、世界と思いながら生きてきた」。700年にわたるギリシア人の物語、完結編。
 
国家を機能させるには、大手企業が振るわなくなる理由とは、勝者と敗者を明確に分ける意味とは、兵士が心から尊敬する人物とは、情報をどこまで上に報告すべきか、迷いと確信の違いとは、リーダーの資質とは、成長がもたらす孤独とは、などなど。ギリシア世界の没落と、いまだに人々を惹きつけ続けてやまないアレクサンドロス大王と、そこに仮託して描かれる人間世界の理。多くの歴史を見てきた筆者だからこそ描ける、溢れんばかりの人への興味に満ちた一冊。ギリシアからローマ、近代までの地中海の3000年の歴史を描き続けてきた、塩野七生の完結編。いちおし