【書評】『ヒトラー(下)』 イアン・カーショー

ドイツ近代史研究の世界的権威である筆者による、ヒトラー研究の金字塔、完結編。
 
ユダヤ人迫害の数字による検証、フランス侵攻の舞台裏、軍備計画の不備、ヒトラー支配下の政治体制、などなど。これまであまり語られることのなかった、ヒトラー体制の研究にも紙幅が割かれている。そこから見えてくるのは、あまりにもお粗末なナチの実態。負けに不思議の負けなしの言葉通り、ドイツは敗れるべくして敗れた。800ページを超える本書は、そこから現代のわれわれに多くの教訓を残してくれる。おすすめ