【書評】 『わかりあえないことから』 平田オリザ

わかりあえないところから出発するコミュニケーションというものを考えてみたい」。演劇人として様々な人々と関わってきた筆者による、価値観が多様化した時代のコミュニケーション論。
 
子どものコミュニケーション能力、ロボットを人間らしいと感じる瞬間、俳優の演技の巧拙を決めるもの、見知らぬ人に話しかけること、隣国同士が仲が悪い理由、などなど。異文化の人とのコミュニケーションの機会が増え、また日本人同士でも様々な価値観が生まれている昨今。従来の日本型の「空気を読む」コミュニケーションは通用しない。そんな時代に求められるコミュニケーション能力とは。
自分とは異質なものを分かろうとするのではなく、「わかりあえない」ことを前提とするコミュニケーション。むしろ「わかりあえない」からこそ、コミュニケーションをとる必要があるのだと思う。いちおし