【書評】 『廃墟の零年 1945』 イアン・ブルマ

1945年。全世界があまねく発狂した時代が終わり、廃墟からの再出発の一年の記録。
 
それは、希望に満ちた年になるはずであった。5月に欧州で、8月にアジアで、戦争は終わりを告げた。人類は輝かしい再生の歴史を歩み始めるはずであった。「血はさらなる血を欲しがる」との筆者の言葉通り、廃墟の零年は復讐と解放と独立と動乱の一年でもあった。勝者の驕りと、敗者の喪失感が交錯する、我々が知らないもう一つの第二次世界大戦史。「歴史とは「零年」の繰り返しなのか」という筆者の問いが、読む者に突きつけられる一冊。おすすめ