【書評】『一汁一菜でよいという提案』 土井善晴

「一汁一菜とは、「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います」。そう語る、料理研究家である筆者による、シンプルな食のすすめ。
 
日本には「ハレ」と「ケ」を区別して、ケの日常は慎ましく、必要最小限の食事で暮らす風習があった。そんな「ケ」の食卓は、一汁一菜のごくシンプルなもの。シンプルだからこそ、美しさを求め、楽しむこともできる。禅の思想にも似た和食の心得。それは西洋料理とは根本から異なる思想に支えられている。和食で香辛料があまり使われない理由、「すみません」の語源、アクを除くことで失われるもの、刺身だけが「お造り」という字を使う理由、などなど。シンプルだからこそ、美しい、和食のことをもっと知りたくなる一冊。いちおし