【書評】『震災があっても続ける』 矢野 陽子

岩手県山田町で毎年9月に行われている、山田祭を追ったノンフィクション。
 
山田祭は、山田八幡宮と大杉神社の2つの神幸祭からなる。暴れ神輿が有名だが、、神楽、さんさ、剣舞、鹿舞(ししまい)、八木節、虎舞などの各団体が町中を練り歩く。山田町の人は新年のカレンダーが届けば、まず9月を開き、祭りの日程を確認すると言われているほど、町の人々に愛されている祭りである。筆者は山田町を何度も訪れ、数多くの人々、団体の取材を重ねた。町の人々の中に深く入り込み、そして見えてきたものとは。
 
伝統という言葉と対で使われることも多い、変化という言葉。山田祭のすごいところは、この変化を恐れないことだと思う。東日本大震災という大災害で、多くの団体が祭りの道具をなくし、家族や家を失った者も多い。そのような大災害だけではなく、どこの地方にもある人口減少、地縁のない新住民との関わり、地区ごとの確執、などなど。様々な危機にさらされながらも、その度に変化することで山田祭は続いてきた。伝統や郷土芸能が続くためには何が必要か、深く考えさせられる一冊。おすすめ