【書評】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』 正垣泰彦

「「良いものが売れる」という考えは、天動説と同じ。自分たちにとって都合よく世界を見ている」。そう語る筆者による、外食経営の指南書。
 
筆者は青果店の2階で「サイゼリヤ」を創業した。客が全く入らなかったことから、朝4時まで営業時間を伸ばした。ところが店はならず者のたまり場となり、客同士のけんかでストーブが倒れ、店は全焼し筆者も九死に一生を得る。開店からたった7ヶ月。そしてこれが本書の1ページ目の内容である。いきなりフルスロットルで展開する筆者の話に、一気に引き込まれること請け合いである。来店客の20~30%が食べてくれる「核商品」をつくる、特定の用途で選ばれる店になる、メニューの値付けのコツ、作業効率を上げるメニューの作り方、数値目標の設定の秘訣、教育のために何をすべきか、標準化の本質、などなど。筆者自身の波乱万丈の経験から紡ぎ出された言葉は、重みと説得力に満ちている。いちおし