【書評】『人間 この信じやすきもの』 T・ギロビッチ

「本書では、誤った信念や信仰がどのように生み出されるかを考える。そして、それがなぜ信じられ続けるかについて検討する」。認知心理学行動経済学を専門とする筆者による、迷信や誤信が生まれるメカニズム。
 
アフリカに棲むサイの90%が、角を闇市場で売るために密猟されているという。なぜなら、サイの角は解熱剤、頭痛薬、強壮剤などとして珍重されているからである。医学的な根拠は全くないにもかかわらず。このように迷信は単なる笑い話にとどまらず、多くの野生動物を絶滅の危機に追いやっている。それでは迷信はどのように生まれ、そしてそれの被害を防ぐにはどのようにすればいいのか。関連付けという人間の長所の弊害、後付けの特異点を信じてはならない理由、2年目のジンクスが起こるわけ、自分に都合のいい解釈がはびこる理由、科学者と似非科学者を見分けるポイント、迷信が当たった時にどうするか、などなど。フェイクニュースがあふれる世界の中で、健全な疑いを抱いて生きるためのヒントが満載。いちおし