【書評】『嫌われた監督』 鈴木 忠平

中日ドラゴンズ落合博満監督、多くの関係者の証言を基に、その素顔に迫る一冊。
 
落合博満は8年間にわたり中日ドラゴンズの指揮を執り、全ての年でAクラス、リーグ優勝4回、日本一1回の実績を残した。まごうことなき名将であり、彼のもとで中日ドラゴンズは黄金期を迎える。だがあまりに強すぎたことが、面白さよりも勝利を求める姿勢が、優勝決定戦ですら空席が目立つほどの観客減少を引き起こし、解任理由の一つにもなったほどである。駆け出し時代から落合監督を追っていた筆者が見たものとは。開幕投手に指名された川崎憲二郎の苦悩、聖域だったミスタードラゴンズのポジションを奪った森野将彦の覚悟、憧れたチームを変えてしまった監督と福留孝介の関係、貧打の常勝チームの打撃コーチの宇野勝のジレンマ、球界最高の二遊間と謳われたアライバのポジション変更の真実、などなど。プロであるためには、勝ち続けるためには、組織を強くするためには、何をすべきかのヒントが詰まった一冊。冷酷非情とも言われ、球界のヒールとも言われ、それでも自分を貫き通し、そして勝ち続けてきた落合博満。これは、そんな落合博満の知られざる姿の記録である。おすすめ