【書評】『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』 鈴木 忠平

これは、北の大地にボールパークを作るという、壮大な夢を叶えた男たちの物語である。
北海道日本ハムファイターズは、地元に愛される球団である。2004年に本拠地を札幌ドームに移転して以来、着実に観客動員数を増やし、またチームも強くなっていった。球界の異端児ダルビッシュ有、稀代のエンターテイナー新庄剛志前人未到の二刀流大谷翔平など、数々のスタープレイヤーを擁し、球界の中でも独自のポジションを得ていた。そんなファイターズの最大の悩みの種が、本拠地の札幌ドームであった。200万都市の動きの鈍さと、コンサドーレ札幌との共用という制約が、理想とするボールパークへの進化を阻んでいた。札幌市や親会社の日本ハムと交渉を繰り返す中で浮上した、新球場建設プロジェクト。そのプロジェクトを成し遂げた、男たちを追ったノンフィクション。
2010年からボールパーク構想を温めていた、出戻りの実務責任者、前沢賢。前沢の右腕であり、本場米国のボールパークに強烈な憧れを抱く、財務のスペシャリスト、三谷仁志。北広島市役所の叩き上げであり、無名の公立進学校が甲子園出場を果たした「ミラクル開成」の4番打者、川村裕樹。
などなど、ノンフィクションであることを疑うほど、魅力的な登場人物たちの物語。理想のボールパークを作るため、それを核とした新しい街を作るため、仕事に誇りと情熱をかける人々の物語は、読む者の胸を熱くする。
北広島市のキャッチフレーズは、「大志をいだくまち」。そんな言葉がこれほど似合う物語は稀だと思う。いちおし