【書評】『かくて行動経済学は生まれり』 マイケル・ルイス

親友であり、ライバルであり、共同研究者であった2人心理学者が、行動経済学という新しい学問を創りあげるまでのノンフィクション。
 
行動経済学を創った2人の心理学者、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキー。彼らはともにホロコーストを潜り抜け、建国間もないイスラエルでキャリアをスタートさせた。カーネマンまだ何物でもなかったイスラエル軍で、新兵の適性を見抜き強い軍隊を作るための心理学部隊の一員として。トヴェルスキーは軍の精鋭である落下傘部隊を経て、創設間もないヘブライ大学心理学部の一員として。彼らの共同研究は、行動経済学という新しい学問として結実する。人の判断を曇らせるバイアス、無意識の世界、直感の間違い、脳と記憶の関係、プロスペクト理論、などなど。行動経済学から導かれる人間に対する知見はもとより、新しい学問が生まれ、発展していくさまが瑞々しく描かれた良作。第一級の物語と、学問の面白さとを両立させた一冊。おすすめ