【書評】『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』 森岡毅

マーケティングこそがビジネスを成功させるための方法論」。そう語る、USJマーケティング最高責任者である筆者による、マーケティング思考の入門書。
 
価格を上手に上げる方法、意思決定の仕組みづくり、広告の唯一無二の目的、なぜP&Gがマーケティングで有名なのか、売れる仕組みの作り方、戦略の良し悪しのチェックポイント、などなど。分かりやすい言葉と豊富な実例で、マーケティング思考の基礎を学べる一冊。筆者なりのキャリアの考え方や、マーケティングに向いている特徴の分析なども興味深い一冊。おすすめ

【書評】『新世界』 西野 亮廣

時代の寵児が語る、「新世界」の到来と、変化の中での挑戦の仕方。
 
クラウドファンディング、オンラインサロン、レターポット、などの時代を画するようなサービスの提供者として。お笑い芸人、絵本作家、個展開催、本の執筆、など多彩な表現者として。数多の栄光と失敗、幾万のファンとアンチ、数え切れない行動と挑戦、それを潜り抜けた先に筆者が見た、「新世界」とは。
 
世の中には2種類の人間がいると思う。道を拓く者と、道を使う者。筆者は紛れもなく前者だ。筆者が拓く道の先、新世界の到来は、今までの常識とはかけ離れた世界が待っている。おすすめ

【書評】『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』 ジェームズ・ヒュームズ

言葉を力強く人々に伝えるためには、どのようにすればよいだろうか。大統領や有名企業CEOのスピーチライターを務める筆者による、魂を揺さぶるスピーチのテクニック集。
 
沈黙の力、簡潔に話すことの効用、事実を補強する引用、スピーチの前に摂るべきもの、数字で語るコツ、間の取り方、決め台詞の作り方、などなど。チャーチル、ジェファーソン、キング牧師、ワシントン、アイゼンハワーなど古今のスピーチの名手から学ぶ、実践的な手法の数々。読むだけで、スピーチが上手くなった気にさせてくれる一冊。おすすめ

【書評】『ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』 ガルリ・カスパロフ

「機械にあるのは指示だが、私たちには目標がある。壮大な夢をかなえるためにこそ、知能機械が必要なのだ」。史上最強と謳われたチェスプレイヤーであり、かつて「ディープ・ブルー」との対戦で世界的な注目を集めた筆者による、人工知能論。
 
かつて機械は、肉体労働を代用してくれるものであった。今では機械は、人間では到底落ち上げられないような重いものを、驚くべき速さで、しかも正確に運ぶことができる。さらに最近では、知能機械が単純な認知機能を任せられるまでになった。これにより、人間は人間たるゆえんである精神活動にもっと集中できるようになった。人間はもはや、肉体労働をすることも、チェスを指すことすらも、する必要がなくなっているのである。
 
筆者は人工知能の萌芽期から、それが人間と対決し、人間を凌駕し、そして人間と協力する時代までを間近で見てきた。人工知能は人間と違って疲れないし、集中力を乱されないし、調子の波もないし、進歩の速度が想像を超えている。そんな人工知能と対戦することへの意欲と戸惑い、そして人工知能の本質を見抜くまで。筆者の感じたことがそのまま、人工知能の開発史と言っても過言ではない一冊。また超一流の知性だけが持つ、世界の捉え方にもしびれさせられる一冊。いちおし

【書評】『修養』 新渡戸稲造

「些細なことでも実行を積んでいけば、その中に含まれる原則がおのずから会得される」。当代一流の教育者であり、教養人であり、国際人であった筆者による、人としての道徳の教科書。
 
平凡と非凡の差とは、死を恐るべき理由とは、人物の価値を測る方法とは、仕事を選ぶコツとは、継続するために必要なものとは、名誉の効用とは、吝嗇であるべき瞬間とは、逆境に耐える心得とは、早く昇進する人の共通点とは、集中力を養うための鍛錬とは、などなど。優しい言葉と、分かりやすい例えとで、筆者の言わんとすることが何の違和感もなく腑に落ちる。真の教養人とは、誠の偉人とは、筆者のような人物のことを指すのだと思う。何も難しいことは言っていないのに、自然と襟を正される一冊。「修養」のために必読の一冊。いちおし

【書評】『<効果的な利他主義>宣言!──慈善活動への科学的アプローチ』 ウィリアム・マッカスキル

「必ずしも善意が成功に結び付くとは限らない。では、どうすればなるべく効果的に人々の役に立てるだろうか」。そんな疑問から生まれた、慈善活動への科学的アプローチ。
 
日本においても、寄付や慈善活動は当たり前になり、「どの団体に寄付をすべきか」とか「その社会問題解決に力を入れるべきか」が問われる時代になってきている。寄付先を選ぶための指標として、質調整生存年(QALY)、つまり年数×生活の質の向上割合による指数を本書では提案している。これを用いれば、「10人をエイズから救うことと、100人を思い関節炎から救うこと」「40歳のエイズ患者の治療と、20歳の患者の失明を防ぐ手術」など、これまでは困難であった比較をトリアージすることができる。それ以外にも、効果的に世界を良くするための仕事の選び方、フェアトレードの真実、地産地消の落とし穴、ベジタリアンの効果、などなど、科学的アプローチから世界をより効率的によくしていく手法が満載。年収5.2万ドル以上なら、世界的にみると上位1%の富裕層に属するという。われわれには、世界を変える力があるのだ。その力の使い方を知るためにも、必読の一冊。いちおし

【書評】『勉強の哲学 来たるべきバカのために』 千葉雅也

「勉強は変身で、変身はいつでも始められるし、いつ中断してもいい」。そう語る筆者による、「勉強」を哲学した一冊。
 
勉強とは自己破壊であり、何かの専門分野のノリに引っ越すこと。その過程で昔の自分がいなくなるという試練を通過する。だがその試練を乗り越えなければ、勉強を深めることはできない。何かを学ぶということに対する、これほどまでに真摯な考察は珍しい。予備勉強の重要性や、教師の必要性、知識と出典の紐づけなど、勉強を行う上での参考になる考えが満載。「勉強」を極めるために、必読の一冊。おすすめ