【書評】『われらの子ども』 ロバート・D・パットナム

誰の子どもであっても、われらの子どもが困っているなら、その面倒を見る責任はわれら全てが負っている」。そう語る筆者による、米国における教育格差に迫った意欲作。
 
アメリカンドリームという言葉は、すでに死語になりつつある。それを支えた機会と社会移動性における平等が失われつつあるからだ。流動性を失った社会は格差が固定化され、貧しい子どもは才能を十全に発揮するための備えが、家族や学校、コミュニティによって与えられていない。米国で子どもの貧困がもたらすコストは5000億ドルで、GDPの3.8%にも達するという。世代も、人種も、住む場所も異なる多くに人へのインタビューから、米国の格差拡大を数字で示した一冊。
 
筆者が調査したのは米国の現実である。だが日本においても、より色濃くみられる現実でもある。様々な課題は述べられているが、その解決策は述べられていない。それは未来を創る子どもたちの問題は、「われら」自身の問題であるからではないだろうか。いちおし